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2012年7月 2日 (月)
Christodoulides, G. & de Chernatony, L. (2010) Consumer-based brand equity conceptualisation and measurement: A literature review. International J. Market Research, 52(1), 43-66.
消費者ベースのブランド価値(CBBE)の測定についての文献レビュー。ちょっと用事があって読んだ。前に一度ざっとめくってあったのだけど、内容を全然覚えていなかった。
いくつかメモ:
- 消費者ベースのブランド価値(CBBE)の研究は、アーカーさんとかケラーさんのように記憶構造に焦点を当てた認知心理学の系統のものと、市場の不完全性・非対称性に焦点を当てた情報の経済学の系統のものがある。後者の観点からは、ブランドとは消費者に対するシグナル、CBBEはそのシグナルの価値である。研究例としてErdem&Swait(1998, J. Consumer Psych.)というのが挙げられている。ふうん。
- 著者らはCBBE測定をdirectな方法とindirectな方法にわける。前者は、たとえばPark&Srinivasan(1994,JMR)のように、コンジョイント分析やブラインドテストで製品のブランド名抜きの選好を測り、ブランド名つきの場合の選好から引き算するアプローチである(わたしも試しました。ははは)。著者らいわく、このアプローチではブランド価値をその規定因へと分解できない(そりゃまあそうですね)。なお、Kamakura&Russell(1993, IJMR)は選好じゃなくてスキャンデータを用いており、またSwait et al.(1993, IJMR)はブランド名の価値ではなくブランドつき製品の全体効用だけに注目し「全製品のシェアが等しくなる」仮説的価格を求めているとのこと。どちらも面白そうだ。
- いっぽうCBBEのindirectな測定とは、ブランド価値を反映するであろう、選好や効用以外の諸指標を多次元的に調べる方法。アーカーの影響の下、提案はたくさんあるけど(そしてそれぞれ次元のリストが違うんだけど)、実証研究として一番すぐれているのはYoo&Donthu(2001, J. Business Res.)である由。brand awareness&association, perceived quality, brand loyaltyの3次元だそうだ。その他、次元の国際比較としてBuil et al.(2008, J. Product & Brand Mgmt.)というのがある由(2ヶ国間比較だけど)。なお、ブランドの価格プレミアムに注目するアプローチもあるが(Ailawadi et al., 2003, J.Mktg)、著者らは否定的。
- CBBEのindirectな測定においては、コンサル企業の独自ソリューションも重要なプレイヤーで、Interbrand, Young&Rubicam, WPP(ブランドとしてはMillward Brownなんだろうな), Research International のモデルが挙げられている。わざとじゃないか、と笑っちゃうぐらいにお互い次元が違う。最後のRIのソリューション(Equity Engine)は、webで探してみたけど、現存しているのかどうかよくわからなかった。
- 本筋とはちがうけど、対人認知とブランド認知は神経基盤からして違う、というfMRIの研究があるんだそうだ(Yoon, et al., JCR)。へー。
著者らによる研究者・実務家へのアドバイス:
- ブランド価値は多面的概念であって、どういう指標を選ぶべきかはそのブランドのビジョンによって決まる。高級スーパーは安売りスーパーより知覚品質に関心を持つだろう。
- ブランドが製品経験全体に寄与しているそのあり方を知ることが大事だ。
- 指標はカテゴリによってちがって当然。ユニバーサルなブランド価値指標なんて意味がない。(→はっはっは)
- ブランド価値測定は知覚と動機づけによって構成されるべき。行動指標じゃなくて。
- 機能的側面、感情的側面、経験的側面のすべてを含めることが大事。
- マネージャーが短期的な財務指標に注目しすぎている昨今、ブランド価値が金銭的な儲けにつながっているんだということ、そういう諸側面を評価することが大事だということ(そしてそれを維持する方法)を心して説くべきである。
論文:マーケティング - 読了:Christodoulides, G. & de Chernatony, L. (2010) 消費者ベースのブランド価値測定