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2013年5月 7日 (火)
Tadajewski, M., (2006) Remembering motivation research: Toward an alternative genealogy of interpretive consumer research. Marketing Theory, 6(4), 429-466.
たまたま市場調査の会社にお世話になったせいで、仕方がないからまあその方面の教科書などを読んだりしたわけですが、どの分野でもそうであるように、本に書いてあることと実際のビジネスとはちょっとズレがある。たとえば、市場調査の教科書にはモチベーション・リサーチについての記載は少ないし、消費者行動論の教科書でも過去の歴史的遺産扱いだが、実際の調査ビジネスでは現役だと思うんですけどね。コカ・コーラのブランド管理の話などは有名であろう。フロイトとユングに由来する普遍的な消費者理解システム、なあんていう調査パッケージを売っている会社だっていくつかある。
このズレはどこから出てくるんだろうなあ、と前に不思議に思ったことがあって、そのときに読みかけて数ページで挫折した論文。モチベーション・リサーチの歴史を辿るという酔狂な内容。
英語がやたらに回りくどいし、妙にペダンチックなので、全然頭に入らない。整理の都合上読み終えたことにしておくけど、勘弁してほしいよ、もう... みんなが英語が達者というわけじゃないんだから...
いくつかメモ:
- モチベーション・リサーチはErnest Dichterがつくったものだとみなされていることが多いが、実際にはDichterの渡米の前に、すでにPaul Lazarsfeldによって種がまかれていた(おおっと、マスメディア限定効果説の人ではないか。消費者行動論の偉い人でもあったのか)。ある意味、モチベーション・リサーチの立役者はウィーンの政治状況だったといえる。当時オーストリアの保守党政権は社会主義者を弾圧し、ラザーズフェルドの家族は投獄されていたし、ディヒターはユダヤ人亡命者だった。
- ディヒターは自分はフロイディアンではない、もっと折衷主義的だ、と述べていたそうだ。ふうん。
- モチベーション・リサーチは膨大なインタビューと観察を通じて、消費者行動の背後にある主題的連関を探そうとするのだけれど(「インスタント・コーヒーの消費者は怠け者だと思われている」とか)、みつけたパターンを法則として一般化するのではなく、ひたすらその検証を続けていく。また、観察は誤りうるが直接的であり理論中立的であると考えられている。そういう点では、論理実証主義とちょっと似ているところがあった、とかなんとか。ふうん。
- ディヒターはちょっと大言壮語するところがあって、モチベーション・リサーチはそのせいで支持を失った面があるのだそうだ。さらに、50年代の赤狩りのなかで、研究助成が非政治的な定量的研究に向けられるようになったのも衰退の一因であるとかなんとか。ふうん。
- 著者曰く、モチベーション・リサーチは80年代の消費文化理論(CCT)のご先祖様である由。はあ、そうですか。
論文:マーケティング - 読了: Tadajewski(2006) モチベーション・リサーチ、その勃興と衰退