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2015年1月19日 (月)
近代秀歌 (岩波新書)
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永田 和宏 / 岩波書店 / 2013-01-23
先日たまたま読んだ「現代秀歌」が意外に面白かったので、遡って読んでみた。明治・大正期の百首を解説つきで紹介。
読んでいてびっくりしたのは... 短歌なんてからきし疎いので、ほとんどの歌を知らないんだけど(斎藤茂吉と与謝野晶子くらいかなあ)、石川啄木だけはなぜかほとんど全部知っていた、という点。いったいどこで覚えたんだ。
さらに、啄木の歌が非常にベタだという点。なんというか、ことわざか慣用句のようにして覚えていたので、全く気がつかなかったけど、ものすごく俗っぽい。「軽きに泣きて三歩あゆまず」ですよ。
さらにさらに、目からウロコという気分だったのは、実は石川啄木さんという人は技術的に上手い、という点。「東海の小島の磯の」の解説は、その「カメラのズームインの仕方」が「端倪すべからざる技巧」であると評している。東海→小島→磯→白砂→我→蟹、である。なるほどねえー。
そのほかに心に残った歌をメモしておくと... 同じ人のが重なっているなあ。やはり好みというのがあるようだ。
かたわらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな (若山牧水)
白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり (若山牧水)
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ (若山牧水)
めん鶏ら砂あび居たれひつそりと剃刀研人は過ぎ行きにけり (斎藤茂吉)
大きなる手があらはれて昼深し上から卵をつかみけるかも (北原白秋)
街をゆき子供の傍を通るとき蜜柑の香せり冬がまた来る (木下利玄)
牡丹花は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ (木下利玄) ←これ、面白いなあ...
葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり (釈迢空)
白埴の瓶こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり (長塚節)
おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く (伊藤左千夫)
鴨の脚蹴るかとみれば蹴りもせで蹴らじと思えば蹴りに蹴る鴨 (辰野隆) ←ははは
フィクション - 読了:「近代秀歌」