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2015年3月26日 (木)
態度とか価値観とかの測定手法にQソート法というのがある(たしか元はパーソナリティ研究じゃなかったかしらん?)。 ひとことで言えば、項目をカードにして渡し、両極9件法尺度上に、分布が正規分布になるように並べてもらう方法である。心理学辞典でしかお目にかかれないような古ーい手法だが、意外なことに、経営学の分野でレビューを書いている方がおられて...
岡本伊織(2011) Q分類法による価値観の測定: いかに捉えづらいものを捉えるか. 赤門マネジメント・レビュー, 10(12), 851-877.
なんで経営学でQソート法?と驚いたが、経営組織論に個人と組織の価値適合(person-organization fit)という概念があり、よって個人と組織の価値観を測んなくてはいけない、そのためにOrganizational Culture Profileという尺度をつくった人がいて、そこでQソート法を使った。おかげで価値観の測定にQソート法を使う研究者がでてきている。といういきさつがある由。へー。
Qソート法の歴史。そもそもは50年代の因子分析的研究の文脈から始まるのだそうだ。CattellのP方法論というのがありましたが、これにたいしてStephensonという人がR方法論とQ方法論を提案した。個人を行、検査を列にとった表があるとき、列間の相関行列を分析するのがR方法論、行間の相関行列を分析するのがQ方法論。で、Q方法論のための測定手法として開発されたからQ分類法。なのだそうである。へぇぇぇー! 全然知らなかった...
Qソート法では、たくさんのカード(上述の奴だと54枚)を両極9件尺度上に決まった枚数ずつ並べていくわけで、大変時間がかかる。そこで、まずもっとも当てはまる2項目を選んでもらう、次にもっとも当てはまらない2項目、つぎに残りのなかでもっとも当てはまる3項目、... というように選ばせる方法もある由。それでも時間かかりそうですけどね。
著者曰く、項目間の相対比較を求めているからリッカート法より弁別性が高いはず、とのこと。聴取手法比較研究にRavlin & Meglino (1987, J.AppliedPsych.)というのがあって、価値観測定における強制選択、順位づけ、得点配分、リッカート法を比較し、社会的望ましさバイアスはリッカート法で大きいと報告されている由。Qソート法は一種の強制選択なんだからイケてるんじゃないですかね?という理屈である。
この論文の面白い点は、云いっぱなしじゃなくて、5件法リッカートとQソート法を比較する実験をやっているところ(残念ながらn=29だけど...)。相関の中央値は+0.68、最低でも+0.45であった。さらにリッカート法は反応カテゴリの集中がみられる、Qソート法ならちゃんとばらつく、という主張だが... 分布が自由な5件法と、分布が所与な9件法を比べてもねえ? リッカート項目によくみられるいわゆるone-linerさんたちも、それなりに正直かつ真剣に反応している可能性だってあると思うんだけどな。それよか再検査信頼性を比べればよかったのに。
なお、54項目に対するQソート法回答の所要時間は平均12分であった由。ううむ、そりゃあ大変だ。
そんなこんなで勉強になりましたです。
論文:調査方法論 - 読了:岡本(2011) Qソート法レビュー