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2015年11月14日 (土)

 「孫文の義士団」という中国映画がある。先日初めて観たのだが、なかなか面白い映画であった。正確には香港=中国の合作、2009年の作品。いま調べたら、なんと中国側のプロデューサーは、かつて第五世代と称された気鋭の映画監督の一人、「黒砲事件」「輪廻」の黄建新だ...
 この映画は、香港からはジャッキー・チュンにレオン・カーフェイにサイモン・ヤムにドニー・宇宙最強・イェン、本土からは王学圻に范冰冰というオールスター大作なのだけれど、印象的な役どころのひとつを、あんまり女優っぽくない中性的な若い女性が演じている。クリス・リー(李宇春)、中国で大人気のポップ・シンガーである。
 他の国はおろか、日本の人気タレントについても全く理解できないのだけれど(先日は喫茶店のお姉さんに呆れられた。「ずっとCD掛かってるけど、これ誰ですか」「(5秒くらい間があって)嵐っていうんだけど、知りません?」)、このクリス・リーさんについても、歌手としてはどのあたりが魅力なのか、私、よくわかんないんですよね。社会文化的文脈なしで、Youtubeで何本か動画をみても、なぜ人気があるかなんてわかりっこないのである。ましてや活字で説明を読んでも、さらに役に立たないんだろうけど...

金明華(2015) 中国における新女性像の受容をめぐって : 李宇春ファンの活動を手がかりに. お茶の水女子大学人間文化創成科学論叢, 11, 41-50.
 というわけで、ふと見つけて読んだもの。
 えーと、女性たちは大衆文化の消費にあたり、単に男性の視線を内面化し男性の審美基準に従っているのではなく、さまざまな戦略を駆使して主体的に快楽を見出している。中国における女性たちのこうした文化消費が持つ可能性について論じるために、李宇春ファン(女性が圧倒的に多い)の文化実践に注目しましょう。
 ファンがアクセスするサイトで調査協力を求め、中国全土から31名のファンのファンレターを収集。さらに北京の20名のファンに半構造化インタビュー。
 李宇春はTV番組「超級女声」[リアリティ・ショーのようなものらしい]から生まれたスターで、アンチも多い。その歌唱力を疑問視する声も多いが[やっぱそうですよね...]、なにしろ外見が女らしくない(長身のショートカット)。その自由な発言も賛否を呼んでいる。
 熱心なファンたちのなかには、自主的なファン開拓活動や、李宇春さんの組織するボランティア活動に積極的に取り組んでいる人も多い由。彼女たちの活動の原動力は、中国社会における新しい女性像の受容への期待である。女性たちは市場主義のルールを利用して社会に介入し、価値観の多元化を促進しようとしているのである。
 とかなんとか、そういう内容であった。へー。

 ともあれ、「小朋友」という曲のMVでは、リーさんは原宿通りあたりを楽しそうに歩いておられる。次にお越しの際は、表参道通りを渡ってキャットストリート沿いを散策していただければ、私の勤め先に近いのでありがたいです。瑞穂の豆大福とかいかがですかね。

論文:その他 - 読了:金(2015) 現代中国におけるクリス・リーのファンの生活と意見

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