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2018年4月28日 (土)

 しばらくの話だが、消費者態度指数ってあるじゃないですか、あれってどういういきさつで、誰が作っているのか、ふと疑問に思った。別に日本のオリジナルではなくて、米国にもミシガン大学の信頼感指数とかあるじゃないですか。誰が最初に作ったの?

 調べてみたら、米国にはミシガン大のほかにConference Boardというところが出している信頼感指数がある。Conference Boardというのは非営利の民間調査機関で、「全米経済審議会」と訳すのだそうだ。へええ。調べてみるものね。

 前田穣 (1999) 経済意識・経済的態度・経済的信念研究の系譜(1) G.カトーナのマクロ的消費者態度研究. 奈良大学紀要 (27), 107-117.
 というわけで、Ciniiを検索してみたら引っかかった奴。 著者は社会学の先生らしい。題名には(1)とあるが、たぶん続編はない。
 非計量経済学的なマクロ的消費者行動研究の代表例として、ジョージ・カトーナ(George Katona)の研究を概観します、という紀要論文。カトーナって、消費者行動論の教科書では見かける名前だけど、どんな人か全然知らなかった。いまWikipediaをみたところ、もとはドイツでゲシュタルト心理学やってて、米国に亡命した人らしい。ラザースフェルドとかディヒターとかと似た経歴ですね。

 いわく。
 マクロ的な消費者行動研究はもともと少ない。例外はカトーナが率いたミシガン大のサーベイリサーチセンターのICS(The Index of Consumer Sentiment)である。[←へえええ!そうだったのね!]
 カトーナは心理学者として出発し経済行動の研究を始めた。マクロ経済の心理的研究には3つの主要な敵がいた。

 消費者態度が経済に対して外生的に左右されることがある(戦争の危険とかで)、と考えたのはカトーナだけではない。たとえばノエル・ノイマンはマクロ経済の「予言者としての世論」という論文を書いている[←へえー]。
 いっぽう批判も多い。たとえば日本では石井健一(1994, in 福村出版から出てる飽戸編の本)という人が、消費者態度指数(暮らし向き)よりGNPが先行すると指摘している。でも、ICSでマクロ経済が予測できるかというのは実はカトーナの主張の検証になっていない。カトーナは消費者態度が支出そのものではなく支出の変化を予測すると考えたからだ。
 Shapiro(1972)いわく、カトーナは態度変化のメカニズムが変化すると考えていた、しかしICSを計量経済的モデルで再現できる、ゆえにカトーナの主張はおかしい。[...この節、説明が全然理解できないのでパス...]

 カトーナから何が学べるか。ここではインフレーションの研究についてみよう。
 通常の経済理論によれば、インフレ時には支出が増大するはずである(貨幣をモノに変えた方が得だから)。しかしICSはインフレ加速時に下がる。これは所得増大の利得がインフレによって侵害されると感じられるからである。こういうカトーナの説明は「不安」といった心理学概念を適用したもので...[すいません、この節も途中から論旨が見えなくなってしまった... きっと私が悪いのです...]

 まとめ。かつてH.サイモンはメイヨーらの人間関係論を、それってテイラー的労働者観から感情的存在としての人間を回復しただけで意思決定能力を持つ組織成員に至っていないじゃんと批判したが[←出典は書いてない]、カトーナも消費者意思決定の非合理性を指摘するあまり、人間をなにか感情的存在として理解するきらいがあったのではないか。云々。

論文:マーケティング - 読了:前田(1999) G.カトーナ、消費者態度指数の父

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