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2018年8月30日 (木)

Bail, C.A., et al. (2018) Exposure to opposing views on social media can increase plitical polarization. PNAS, Aug 2018.
 一昨日電子版が出て、メディアに取り上げられ話題になっているらしき論文。ほんとは仕事や学会発表やセミナーでいまそれどころじゃないんだけど、計算の待ち時間にイライラしながらめくった。ううむ、まさに現実逃避である。

 いわく。
 USにおける政治的極化は深刻な状態にある。その原因としては、「エコー・チェンバー」、つまり対立する政治的見解への接触が限定されていることによって生じる既存信念の強化が挙げられることが多い[ここで以下をreferしている: Bakshy,Messing,&Ademic(2015 Sci.), キャス・サンスティーン(2001書籍)、King,Schneer,&White(2017 Sci.), Beryy & Sobieraj(2013書籍), Prior(2013 Ann.Rev.Polit.Sci.)]。
 エコー・チェンバーと極化という問題への懸念はソーシャルメディアによってさらに増している。しかし、SNSが政治的意見を形成しているのか(あるいはその逆か)を調べるのはすごくむずかしい。
 というわけで、Twitterで大規模フィールド実験をやりました。仮説は3つ、ちゃんと事前登録してまっせ。

  1. 選択的接触を妨害すれば政治的極化は軽減される。この仮説、対人接触なら研究があるんだけど(集団間接触とステレオタイプの研究)、SNSでやるところが新しい。
  2. 異なる政治的見解に接するとバックファイヤが起きてかえって極化する。自分の態度と対立するメッセージのせいで既存信念への関与が高まるから。これは比較的新しい主張である[といいつつ、Load,Ross,&Lepper(1979JPSP)というのを引用しているぞ。Lepperって内発的動機づけのLepperかな?]。
  3. リベラル層より保守層でバックファイヤが起きやすい。保守は伝統を重視しリベラルは変化と多様性を重視するから。これも研究がいろいろあるけど、大人数でSNSでってのはない。

 それでは調査デザインです。[正直、こういう話はデザインが一番面白い]

  1. 2017年10月から、Twitterユーザに短い調査をかけた。政治的態度、SNS利用、メディア接触など。TwitterのIDも集めた。専門の調査会社に依頼した[どこだろう?]。
  2. 一週間後、民主党支持者(901名)と共和党支持者(751名)を、{政党支持、Twitter利用頻度、現在の出来事への関心の程度}で層別し、処置群と統制群にランダム割付。で、処置群には11ドル払ってボットをフォローさせた。ちゃんと読ませるために、毎週調査を掛け、このボットが一日に二回ツイートしてくる動物の写真がなんだったかを訊いた[はっはっは]。これが1ヶ月間。
  3. 最後にまた金払って、最初のと同じ調査。

 さて、このボットは一日24件をリツイートする。対象者には説明しないんだけど、実は、共和党支持者に与えられるボットはリベラルなアカウントのツイートだけをリツイートする嫌な奴であり、民主党支持者に与えられるボットは保守アカウントのツイートだけをリツイートする嫌な奴なのである。[この仕組みを作る話も面白くて、有名人のアカウントから出発してフォロー関係のネットワークをつくり、近接行列を対応分析したとかなんとか... 本筋じゃないのでパスするけど、いずれ気が向いたらappendixを読んでみよう]

 自分の身になって想像してみると、なんとなく結果は読まなくてもわかるような気もするのだが... お待たせしました、結果でございます。
 処置群のcomplianceにばらつきがあるので、分析がかなりややこしくなっているんだけど、そこは無視して主旨だけメモしておくと...共和党支持者は処置によってより保守的になった。民主党支持者はそうでもなかった。
 
 考察...の前に、まずは本研究の限界について。

はいはい、いろいろ限界はありますですよ。

 考察。
 本研究の意義: (1)対立する政治的見解に接触させても、政治的極化は緩和されるどころか、バックファイヤが起きることが示された。(2)手法的イノベーション。
 リベラルのみなさんは、よくSNSを通じて幅広い政治的見解を人々に提示しようなど考えるけど、そんなのろくなことないですよ。政治的分断に橋を掛けるためには、他の工夫をしなければ。云々。
 
 ... はっはっは。なかなか面白い論文であった。
 なにより、手法が面白いっすね。「対象者に金を渡してツイッターを毎日チェックさせましょう」などという、私が会議室で話したら馬鹿にされちゃいそうなアイデアを、実行に移しているところが楽しい。なぜ処置群をもうひとつ作らなかったかなあと思うけど(「リベラルと保守の両方の政治的意見をリツイートするボット」を与える群を作っておけば、結果の解釈がもう少し絞り込めただろう)、限られた予算の下での実験としては、このデザインで正しいのであろう。
 
 著者らも考察の手前で強調しているけど、この結果をどこまで一般化できるのかは怪しいところである。
 この話、twitterの特性と深く関わっていて、実は事前の政治的態度とメディアとの間で適性処遇交互作用みたいなことが起きているんだけど、twitterだけ調べてるから「保守派は対立意見に触れると極化する」という風に見えちゃうのかもしれないな、とも思う。たとえば、自宅の隣人がリベラルだったら保守のおっさんは歩み寄るけど、隣人が保守だったらリベラルのおっさんは世を憂いてよりかたくなになる、とか? そんなこたあないか。

論文:その他 - 読了:Bail, et al. (2018) Twitterでリベラルなツイートを読むと保守派は少しは歩み寄るか? →それどころかもっと保守的になる

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