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2018年9月17日 (月)

貞包英之(2013) 贈与としての自殺 - 高度成長期以後の生命保険に関わる自殺の歴史社会学. 山形大学紀要(社会科学), 43, 2.
 たまたまみつけて、興味本位で読んだ。
 社会学者だけあって、社会通念上なかなか口にしづらいことをしれっと述べている。たとえばこんな箇所。

もっとも根底的には,生命保険にかかわる自殺の減少がそもそも望ましいとはいえない可能性について考えてみる必要がある。その自殺は企業や家族の成長を可能とする経済的根拠[借金の担保にするってことね]として利用された以外にも,高度成長期以降の社会の急速な発展から取り残された人びとの疎外を償う積極的な社会的機能をはたしてきた。現象的にみれば生命保険にかかわる自殺は,相対的に豊かであるはずの他の被保険者から保険金を合法的に掠めとる戦略的ゲームとして機能する。すなわちその自殺はみずからを残し豊かになりゆく社会に対する命がけの挑戦や復讐の手段として, 社会の発展から取り残された人びとに最後の矜持をあたえる。この意味で性急にその自殺を社会から締めだすことが,ゆたかな社会の実現につながるとはかならずしもいえない。

論文:その他 - 読了:貞包(2013) 贈与としての自殺

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