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2014年2月20日 (木)

Muthen, B. (1994) Multilevel Covariance Structure Analysis. Socilogical Methods & Research, 22(3), 376-398.
 仕事で階層因子分析モデルを組んでいて、混乱しちゃうことがあったので、頭を整理するために読んだ。導師Muthen, 哀れな文系ユーザ向けに、共分散構造分析(というかCFA)において階層データを正しく扱う必要性を説くの巻。導師は素人向け説明の達人であらせられるので、こういうのは読まなきゃ損である。ま、ちょっと古い論文ではあるけれど。

 えーっと... まず階層CFAモデルの概説。順を追って懇切丁寧に説明しておられて、頭が下がります。
 結局のところ、こういうモデル。群 $g$ に属する個人 $i$ の観察値ベクトルを y_{gi}として
 $y_{gi} = \nu + \Lambda_B \eta_{Bg} +\epsilon_{Bg} +\Lambda_W \eta_{Wgi} + \epsilon_{Wgi}$
$\eta$が因子、$\Lambda$が負荷である。
 で、このモデルをふつうのSEMのソフトで推定する方法を紹介。要するに、観察変数$y_1, y_2, \ldots$が潜在変数$y_{B1}, y_{B2}, \ldots$を持ち(係数は固定)、観察変数には $\eta_W$からパスが刺さり、潜在変数には $\eta_B$ からパスが刺さる、というモデルである。推定方法として、導師が提案するMUML推定量を紹介。これはFIMLの近似だが、計算が簡単である由。このへん読み飛ばしちゃったけど、まあいいや。いまでは導師自らが開発したMplusで簡単にFIML推定できてしまう。
 導師お勧めの手順は以下の通り。

  1. まずは階層を無視してCFA。モデルの適合度はインフレを起こすけど、あたりをつけるぶんには構わない。
  2. 各変数について級内相関を推定する。ここでいう級内相関とは、群間の母分散を$\sigma^2_B$, 群内の母分散を$\sigma^2_W$として $\sigma^2_B / (\sigma^2_B + \sigma^2_W)$ のこと。これがいずれも 0 に近かったら、階層を気にすることはないわけだ。$\sigma^2_W$はプールした群内分散$ s^2_{PW}$で推定すればよい。いっぽう $\sigma^2_B$の推定量は、群間分散$s^2_B$じゃなくて、クラスサイズを $c$ として $(s^2_B - s^2_{PW}) / c$ になる(ああそうか、1要因のANOVAだと思えばいいのか)。ま、級内相関も、いまではMplusがさっと出してくれるけど。
  3. プールした群内共分散行列 $S_{PW}$について、ふつうのCFAを行う。 $S_{PW}$は群内の母共分散行列 $\Sigma_W$の推定量だから、理屈の上からいえば、それは 群間共分散行列 $\Sigma_B$ に制約をかけなかったときの階層CFAに等しいし、実際にも近いパラメータ推定値になる。サンプルサイズはN-(群の数)とすること。GLS推定でもML推定でもよろしい。
  4. 順番からいえば、次は群間構造の推定だが、これは結構難しい。群間共分散行列 $S_B$ は、群間の母共分散行列 $\Sigma_B$ の推定量ではなく、$c \Sigma_B + \Sigma_W$ の推定量なのだ (群内分散が大きいと群間分散も大きい)。従って $S_B$を分析するのはお勧めでない由。
  5. 以上を踏まえて、ちゃんとした階層CFAをやる。(なーんだ、結局やるのか)

 後半は分析例。生徒の算数の成績データ(6項目)の1因子CFAで、学級を無視した分析が項目の信頼性(共通性のことであろう)を過大評価してしまうことを示している。あー、なるほど。素朴に言えば、学級の効果のせいで項目間相関がインフレを起こすわけだ。
 とかなんとか。適当に読み飛ばしちゃったけど、勉強になりました。ちょっと古めの論文を読むのもそれはそれで良いかもしれない。

論文:データ解析(-2014) - 読了: Muthen (1994) 階層共分散構造分析へのご招待