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2014年9月 9日 (火)

小川祐樹、山本仁志、宮田加久子 (2014) Twitterにおける意見の多数派認知とパーソナルネットワークの同質性が発言に与える影響: 原子力発電を争点としてTwitter上での沈黙の螺旋理論の検証. 人工知能学会論文誌、29(5), 483-492.
 先日読んだピューリサーチセンターの自主調査が面白かったので、たまたま目に留まったこの論文も読んでみた。第三著者は昨年亡くなった高名な社会心理学者である。

 ええと... 2012年2月末に楽天リサーチのモニターからツイッター利用者を集めて調査。1276人を分析。
 まず調査票で、原発への賛否、自分の意見がtwitterで多数派だと思うか少数派だと思うか、原発問題の主観的重要性、原発についての知識の程度、政治への関心、を聴取。
 で、調査参加者にtwitterのアカウントを訊いておいて、その人ならびにその人がフォローしている人の3月中のツイートを収集し紐づける。うわあ、ネット調査のモニターさんが、twitterのアカウントまで教えてくれるかなあ...? ふつうの市場調査ならかなり厳しそうだ。調査主体の名前が大学であるところが勝因かもしれない。
 ある対象者の原発関連のツイートを抜き出し、オリジナル、メンション、公式RT, 非公式RTに分ける。また、ネットワーク構造の指標として、フォロー数、フォロワー数、クラスタ係数を使用する。さらに、ここからが面白いんだけど、(1)2月の調査票と突き合せると原発への賛否がわかるわけで、全対象者のデータを使い、ツイートから賛否を推定する分類器をランダム・フォレストで組んでしまう。(2)このモデルを使い、ある人がフォローしている人々のそれぞれについて、原発への賛否を推定しちゃう。(3)5人以上フォローしている対象者614人について、その人がフォローしている人がその人と同意見である割合を求める。これを推定同質性と呼ぶ。

 結果。フォロー数・フォロワー数が多いと推定同質性が低い(なるほど)。クラスタ係数が高いと推定同質性も高い(友達と友達が友達な人は友達たちと意見が似ているわけだ)。多数派認知と推定同質性は無相関(なるほど、タイムラインで世の中を判断しちゃうほど能天気ではないってわけか)。
 原発関連ツイート数を従属変数にした回帰モデルを組み、デモグラや知識や主観的重要性や政治関心を投入した上で、多数派認知と推定同質性の効果を調べる。(ちょ、ちょっと待って、原発問題に限らない全ツイート量は調整しなくていいの? このモデルだと、原発関連ツイート数との関連を見ているのか、日頃のツイート頻度との関連を見ているのか、わからないんじゃないかしらん? うーむ...)
 ともあれパラメータをみると、

 考察にいわく:

 というわけで、いろいろ疑問はあるものの、態度調査一発ではなく実行動を押さえているという意味で、先日のピューのリリースより面白い研究であった。勉強になりました。
 思うに、分析対象者のなかでもtwitter上での匿名性の程度にはばらつきがあるはずで、そこんところを測定できていたらさらに面白かっただろう。匿名のまま空気読まずに吠えるのは簡単なわけで、フォロワーとの間でオフラインでの社会的関係がある人ほど「沈黙の螺旋」が効く、というような関係がありそうなものだ。

 先行研究概観のところからメモ: 沈黙の螺旋理論の研究では、従属変数を個人の意見表明意図、独立変数を個人の意見と意見分布の認知とすることが多い由(先日のピューリサーチセンターのリリースもこのパラダイムであった)。すでに研究はいっぱいあり、メタ分析もあり(Glynn, Hayes, Shanahan, 1997 POQ)、沈黙の螺旋が生じている程度を測定する指標なるものさえ提案されているそうな(Sheufele, Shanahan, Llee, 2001 Communicatin Res.)。ひゃー。

論文:心理 - 読了:小川・山本・宮田 (2014) 原発関連tweetに「沈黙の螺旋」は生じたか