elsur.jpn.org >

« 読了:Berg & Rietz (2003) 条件つき予測市場による意思決定支援 | メイン | 読了:Wolfers & Zitzewitz (2004) 予測市場レビュー in 2004 »

2014年12月 1日 (月)

Presser, S., Couper, M.P., Lessler, J., Martin, E., Martin, J., Rothgeb, J.M., Singer, E. (2004) Methods for testing and evaluating survey questions. Public Opinion Quarterly, 68(1), 109-130.
 仕事の都合で、ちょっと地味な文献を...
 社会調査やらマーケティングやらメディアやら、世の中はアンケート調査で溢れており、質問紙づくりの職人を自負する方も大勢いるが、そういう方が知っていそうで不思議と知らない、調査票プリテスト手法についてのレビューである。
 Presser, Couper, Singerは有名な社会調査法研究者、他はUSセンサス局、英統計局、RTIの人。POQに載っているが投稿論文ではなく、論文集"Methods for Testing and Evaluating Survey Questionnaires" 第1章の転載。どうやらイントロの章らしく、以降の各章について律儀に言及している。
 
 著者らいわく...
 本調査の前に調査票の適切性をチェックするという発想自体は一般的である。たいていのリサーチャーはドレス・リハーサル方式、つまり、作成した調査票でちょっと回答を集めてみて、調査票に欠陥がないか調べる、というやり方を信じている。Sudmanの教科書(1983)にも「まずは20-50票くらい集めてみなさい」とある。
 このやり方の背後には、仮に適切でない質問項目があったとしたら、それは回答そのもののなんらかの特徴(無回答が増えるとか)、ないし回答の様子におけるなんらかの特徴(回答をためらうとか)を引き起こすであろう、勘の良いリサーチャーならそれをみて、調査票にまずい点があると気づくであろう... という信念があるわけだ。残念ながら、この信念になんらかの根拠があるとは言い難い。
 というわけで、本論文では調査票プリテストの手法について概観する。取り上げるのは、認知インタビュー、行動コーディング、反応潜時、ビニエット分析、デブリーフィング、実験、統計的モデリング。なお、より定性的な手法(FGI, エスノグラフィ)、ないし回答者からデータを集めない手法(専門家の評価、人工知能、コーダーの評価)は含めない。[←人工知能!? Graesser et al (2000, ASAのSRMセクションのProc.)というのが挙げられている。Art Graesserって物語理解過程で有名な人じゃん...]

[ここからは、その他の話題についての各章の紹介]

将来のアジェンダ。プリテスト手法によってその結果がちがうわけだが、これは手法の中に信用できない奴があるせいかもしれないし、検出できる調査票の欠陥のタイプが手法によってちがうのかもしれないし、なにが欠陥かという点についてコンセンサスがないからかもしれない。それに、検出された欠陥をどうやって改善するかはまた別の問題だ。
 今後の課題:

要するに論文集の各章の紹介なので(後半から特に)、だんだん関心を失ってナナメ読みになってしまった...

 日本語で認知インタビューといえばほぼ間違いなく目撃証言の話だが、英語でcognitive interviewと検索すると調査票プリテストの話も負けずに数多く見つかる。米の調査法研究のこうした充実ぶりは(著者らにいわせればこれでも全然足りないわけだが)、あちらの研究者の厚みを示しているという面もあるだろうけど、ひょっとしたらかの国の公的調査を取り巻く特殊な社会的事情のせいなのでは、と思うこともある。その意味で、日本の調査関係者もこういう実証的態度をお手本にすべきだと手放しに賞賛すべきかどうか、よくわからないのだけれど... 少なくとも、消費者マーケティングの国際化、マルチカントリー調査の増加という文脈では、調査票プリテストはこれから重要性を増す話だと思う。

論文:調査方法論 - 読了: Presser, Couper, Lessler, Martin, Martin, Rothgeb, & Singer (2004) 調査票プリテストの諸手法

rebuilt: 2020年11月16日 22:57
validate this page