elsur.jpn.org >

« 読了:阿部(2010) アイデア生成課題における身体-環境相互作用 | メイン | 読了:「五色の舟」「ちーちゃんはちょっと足りない」「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」 »

2014年12月27日 (土)

van Kerckhove, A., Geuens, M., Vermeir, I. (in press) The floor is nearer than the sky: How looking up or down affects construal level. Journal of Consumer Research, 41. 2005.
 最近は身体化認知と解釈レベル理論を合わせた研究が散見されるが、そのひとつ。著者らはベルギーの人。第一著者の博論である由。
 上ないし下を見る運動が解釈レベルに効くという話。

 いわく、消費者が対象を見る際、下に見下ろす動きを伴う場合と上に見上げる動きを伴う場合では、対象についての意思決定が異なる。なぜなら、(1)下に見下ろす動きは近距離の刺激、上に見上げる動きは遠距離の刺激と連合している。(2)解釈レベル理論によれば、近距離の刺激は具体的に、遠距離の刺激は抽象的に処理される。(3)消費者の意思決定においては、具体的処理によってフィジビリティ属性(opp.望ましさ属性)が重視されるようになり、かつ選好と決定の整合性が増大する... という、風が吹けば桶屋が儲かる級にアクロバティックな筋立てだ。

 先行研究としてreferされているのをメモっておくと:

 実験は6つ。

実験1. 見上げる/見下ろす動作が対象との距離と連合していることを示す。
 被験者は学生45人。椅子に座らせ目隠しし、「海に釣り舟がいる」云々という話を聞かせる。このとき、頭の後ろのヘッドレストのせいで首の角度が固定されている。で目隠しとヘッドレストを外し、舟までの想像上の距離を答えさせる。要因はヘッドレストの角度: {上向き30度, 下向き30度}。著者は動作(movement)っていってるけど、要は姿勢のことね。被験者間操作。
 結果: 回答の平均は、下向き条件で8.9m, 上向き条件で25.2m。

実験2. 見上げる/見下ろす動作が対象との距離の推定を経由して解釈レベルに効くことを示す。
 被験者は学生56人。まず立たせて、1.7m先正面の壁の目印を30秒注視(図には1.6mって書いてあるけど...)。で、壁までの距離を推定させる。次に、解釈レベルを測るBIFという尺度に回答(Behavioral Identification Form. Vallacher & Wegner, 1989 Personality Processes & Individual Diff. 日本語版もある模様。なんでもあるものねぇ)。要因は壁の目印の位置: {高さ250cm, 80cm}。被験者間操作。
 結果: 見下ろし条件のほうが距離を近めに推定し、解釈レベルが具体的。bootstrapping mediation test によれば(←なんのことだろう? Shrout & Bolger (2002, Psych.Methods), Preacher & Hayes (2004, BRMIC) というのが引用されている)、解釈レベルへの効果は距離推定のバイアスに媒介されている。

実験3. 解釈レベルの指標を変えて再現。今度はカテゴリ化課題を使う。解釈レベル理論によれば、抽象的処理ではカテゴリが広くなるはずである。ついでに、視線角度と頭部角度を別々に操作して、どっちが効くかを調べる。
 被験者は学生128人。椅子に座らせ、まずBIF。次に、スクリーンに20個の製品名を提示(「クッキー」とか)、好きな数のカテゴリに分類させる(どうやって回答させるのかしらん...)。ヘッドレストの角度とスクリーン上の提示位置を操作: 首を{30度上向き,30度下向き}にして顔の正面で提示, ないし首はまっすぐで{上方向に提示,下方向に提示,正面に提示}の5セル。被験者間操作。
 結果: 首が下向きでも視線が下向きでも、BIFは具体的、カテゴリ数は増える。首が上向きでも視線が上向きでも、BIFは抽象的、カテゴリ数は減る。カテゴリ数への効果はBIFに媒介されている。

実験4. 今度はfeasibility-desirabilityトレードオフを指標にする。
 被験者は学生151人。椅子に座らせ目を閉じさせ、ヘッドホンで課題を提示。「あなたはプリンタを買おうとしています。Aは信頼性9点、品質8点。Bは信頼性8点、品質9点。どっちにしますか」100点恒常和法で回答。要因はヘッドレストの角度: {上向き、下向き、まっすぐ}。被験者間操作。
 結果: 首が下向きだとAを好み(feasibility志向)、首が上向きだとBを好む(desirability志向)。

実験5. 今度は選好-決定の整合性を指標にする。解釈レベル理論の文脈でこの結果指標はあまり注目されていない由。さすがに媒介効果を一発で語るのは難しいらしく、実験は2つ。
 実験5A。学生60人。椅子に座らせ、(1)M&Mなどキャンディー5ブランドを好きな順に順位づけ。(2)解釈レベルの操作。低レベル条件では、「歌手」「パスタ」など15項目のリストを示し、identify an example for each of the provided categories. 高レベル条件では、同じリストを示して、provide a category for each item. (←これがなぜ解釈レベルの操作になっているのか、よくわからない... Fujita et al. (2006PsychPsy)を読めばいいらしい) (3)目の高さの棚にキャンディー5ブランドを並べて示し、好きなのを選ばせる。結果: 低レベル条件のほうが、順位づけ課題で1位にした奴を選びやすい。
 実験5B。学生115人。椅子に座らせ、(1)順位づけ。実験5Aと同じ。(2)棚にキャンディー5ブランドを並べ、好きなのを選ばせる。要因は、キャンディーがあるのが棚の{上の段, 下の段}。結果: わずかではあるが(p=.07)、下の段のほうが順位づけで1位にした奴を選びやすい。
 (←実験5Bだけ手続きがちょっと素人っぽい。別の実験と相乗りしているようだし、ここで差が出たので始めた研究ではないかしらん) (←末尾の付録をみたらやはりこれが一番古かった。勘がいいなあ俺。誰も褒めてくれないから自分で褒めよう)

 考察。距離は権力感覚とかムードとかが媒介変数になっているという説明は無理だ。云々。
 あれこれスペキュレートしてるのは省略するけど、Eコマースでのパソコンとモバイル端末の違いに影響してんじゃないかしら、というくだりが面白かった。なるほど、タブレットもスマホも見下ろす感じですもんね。

 ざっとめくっただけだけど、ありがたいことに論述がスマートなので、大筋は見落としていないと思う。実験の結果は綺麗すぎてちょっと怖い感じ。ともあれ、勉強になりましたです。

論文:心理 - 読了:van Kerckhove, Geuens, & Vermeir (in press) ちゃんと考えて選んでほしいなら下の棚に置け