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2015年1月14日 (水)

Schwarz, N. (2006) Feeling, fit, and funny effects: A situated cognition perspective. Journal of Marketing Research, 43(1), 20-23,
 ええと、この雑誌のこの号にはAvnet & Higgins, How regulatory fit affects value in consumer choices and opinions という論文が載っていて、読んでないけどアブストラクトによれば、制御適合があるときは(つまり、制御焦点が促進で目標追求方略がポジティブ追求のとき、ないし制御焦点が予防で目標追求方略がネガティブ回避のとき... という意味であろうか)、自分の選択の結果の価値がより良く評価される... というような話らしい。この論文に対するコメント。
 いちおう身体化認知関連の記事なので、義理で読んだんだけど、これがのっけから面白くって...

 冒頭にいわく。マーケティングやっているある同僚に訊かれました。「Fishbein-Ajzenの合理的行動理論ってあったじゃない。ああいうモデルって、いまどこにいっちゃったの? 最近の心理学の人の話って、『こんな小さなことが人の感覚や好みを変えちゃうんですよ、可笑しいですよね』ばっかりじゃない?」[←吹き出してしまった。まさにそのとおり!]

 situated cognitionというメタ理論的観点から見ると、認知は文脈、身体、世界に埋め込まれている。認知の文脈依存性にはなんらかの適応的機能がある。ところがその心的過程は、それが適応的機能を果たすための条件を欠いているような実験手続きの下では、びっくりするような可笑しな効果(funny effect)をもたらしてしまう。心理学者は直感に反するような例示が好きなので、結局、可笑しな心理学的現象が蔓延し、マーケティング分野の人を混乱させてしまう。
 感情(feeling)は人々を状況に適応させる鍵となっている。たとえば、物事がうまくいかなくなると気分はネガティブになり、体系的・ボトムアップ的な処理が促進され、うまくいかない原因の追究と新しい方法の探索につながる。制御焦点は感情と関連してるわけで、Higginsさんの制御焦点と思考の関係の研究はこの延長線上にある。
 制御焦点なり感情なりによる処理方略のちがいには状況に対する適応的価値があるんだけど、頭のいい心理学者は全然関係ない手続きでこの処理を操作しちゃうので、いっけん可笑しな効果が得られるわけだ。筋運動が思考に影響するとか(Friedman & Forster, 2000JPSP, 2002JEP)、文字の色が推論を変えるとか(Soldat et al, 1997Soc.Cog.)。
 [...中略...]
 Avnet&Higginsの研究は、促進焦点のほうが感情が判断に効きやすいこと、そして制御適合があるほうが自分の課題遂行に対する感情がポジティブになることを示した。状況化認知という視点から見ると、感情がポジティブになったのは、方略と課題要求との一致性のメタ認知的評価を反映している。課題要求の知覚は、ここではたまたま制御焦点で変わっているけど、他のいろんな要因によっても変わるものだ。
 Avnet&Higginsは、決定の方法という無関係な要因が選択に影響することを示した。でも、製品について注意深く調べ比較検討した人と、たんに製品評を読んだだけの人を比べたとき、全く同じ情報しか手に入れていないとしても、前者のほうが支払意思額が高くなるのは、別にfunny effectではないのでは?

 というわけで、もとの論文を読んでないのでわからないけど、制御焦点とか目標追求方略といった概念を状況への適応という観点から捉えなおせば、この結果はあたりまえだよね... という前向きなコメントだと思う。

論文:心理 - 読了:Schwarz (2006) 博士の状況化された認知、または如何にして私はただ面白がるのを止めてそこに適応的価値を見出すようになったか