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2015年1月14日 (水)

Ackerman, J.M., Nocera, C., & Bargh, J.A. (2010) Incidental haptic sensations influence social judgments and decisions. Science. 328(5986), 1712-1715.
 身体化認知の実験としてものすごくよく引用される研究。
 説明としては概念発達におけるscaffoldingと概念メタファを持ち出している。だんだんわかってきたんだけど、「いっけん関係なさそうな身体感覚が思考・態度に効く」型実験研究は、数はあるけど理論のバリエーションが少ない。バックボーンはだいたい次の5派で、引用文献をみるだけで見当がつく。(1)概念メタファ。Lakoffを引用する。(2)概念メタファに加えてscaffolding。Barghを引用する。(3)シミュレーション。BarsalouのPSSの論文を引用する。(4)経験による連合。Cacioppoを引用する。(5)ものすっごい難しい理屈。他の人に「標準的」というラベルを貼って罵倒するのが特徴。Gibson、Thelen、Clarkのうち2人以上を引用してたら走って逃げたほうがよい。

 ええと、まずは"thinking about weighty matters"というようなメタファの実験。
 実験1. 通行人54人に、求職者の履歴書を見せ評価させる。要因は履歴書を挟んだクリップボードの重さ: {340g, 2040g}。結果: クリップボードが重いほうが、求職者がこの職に対して真剣だと評価する。でも職場に溶け込めるかどうか評価には差がない。自分の評価の正確さ評価も高くなる。でもどのくらい真剣に評価しましたか回答には差がない。[←美しい実験だ...]
 実験2. 通行人43人。「社会的行動調査」と称し、いろんな公共的問題に政府の資金をどのくらい投じるべきかを問う。要因はクリップボードの重さ。結果: 男性はクリップボードが重いほうが金を出すが、女性はどちらでも最高額。[←この実験はなにをやりたかったんだかちょっとわからない。単純にポジティブになるわけじゃないってことなんだろうけど]

 お次は、"having a rough day" "coarse language" 実験。
 実験3. 通行人64人に、まずパズルをやってもらう。次に、社会的関係についての文章を読ませ、協同的か、カジュアルか、といった評価を求める。要因: パズルのピースが{すべすべ, ざらざら}。結果: ざらざら条件のほうが協同性の評価が下がる。
 実験4. 被験者42人、まずパズルをやってもらい、次に最後通牒ゲーム。最後に社会的価値志向(SVO)尺度というのに回答。結果: ざらざらのパズルをやったほうが、最後通牒ゲームでより多くのオファーを出すが、個人主義的(opp. 向社会的)だと分類された人も多い。つまり、ざらざらの触感によって状況が非協同的でないと捉えられ、バーゲニングが促進された。

 最後は、"she is my rock" "hard-harted"実験。
 実験5. 通行人49人に、これから手品を見せます、ここに{毛布, 積み木}があります、ほかになにもありませんよね、と触って確かめてもらう。次に上司と部下が出てくる文章を読ませ、部下の性格を評定させる。おしまい(手品は見せない。ヒドイ)。結果: 積み木群のほうが、部下の性格を固いと評定する。
 実験6. 被験者86名。まず実験5みたいな印象形成課題。次に交渉課題: 値札16500ドルの新車を購入すると想像し、ディーラーに値段を提案してください、さらにそれが拒否された場合の次の値段を提案してください。要因は実験中に座っている椅子の硬さ。結果: 固い椅子のほうが部下を安定的、非感情的と評定。交渉課題の言い値には差がなかったが、硬い椅子だとひとつめの値段とふたつめの値段の差が小さくなる。つまり、態度が固くなる。

論文:心理 - 読了:Ackerman, Nocera, & Bargh (2010) クリップボードが重いと判断も重くなる、椅子が固いと態度も固くなる