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2015年1月19日 (月)

Tom, G., Pettersen, P., Lau, T., Burton, T., & Cook, J. (1991) The role of overt head movement in the formation of affect. Basic and Applied Social Psychology, 12(3), 281-289.
 うなずきの動作が選好判断に影響する、という論文。

 身体化認知の初期の実験研究に数えられるが、まだembodied cognitionという概念が流行していなかった頃に発表されているわけで、イントロ部分のロジックが興味深い。

 いわく。一般に、選好判断に先行して対象の認知的方向付け(cognitive orientation)が生じると考えられている(Fishbein&AjzenとかPetty&CacioppoとかBettmanとかを引用)。いっぽうZajoncは、選好が認知処理ぬきで自動的・非認知的に形成される場合があると論じている[←ほんとにnon-cognitiveって書いている。この頃の言葉遣いでは cognitive = conscious だったのかなあ]。たとえばWilson(1979)では、被験者に妨害課題をやらせながら音楽を聴かせた際、被験者は再認できないけど、前に接触したことがある刺激[←音楽のことかな]のほうが選好された。
 cognitive orientationとは感情(affect)の表象である。感情は認知的な要素と運動的(somatic)な要素を持っていて、両方活性化すると強い感情になるといわれている(Schacterとかを引用)。
 さて、反論は首の横振り運動とともに、好ましい思考は縦振り運動とともに学習されると考えられている。首の運動が説得に与える影響を示した実験もある(Wells & Petty, 1980 Basic & Applied Soc.Psych. なんと、80年に...)。本研究では選好に与える影響を調べます。

 。。。そうかー、認知活動の身体性がどうこうというより、単純接触効果みたいな、態度形成の自動的基盤という文脈で出てきた研究だったわけか。論文の末尾でも、本研究は表情研究と同様に態度における運動要素の重要性を示唆した、とあくまで態度研究の文脈でまとめている。なるほど、こうしてみると、この研究までさかのぼって身体化認知研究と呼ぶのは、ちょっとミスリーディングな感じだ。

 実験。ひとつしかやってない。この時代はよかったねえ...
 学生120人。スポーツ中のヘッドホンの使用テストですと教示(はっはっは)。音楽を聴きながら首を{縦に, 横に}振ってもらう。その間、目の前のテーブルの上に質問紙とペンを置いておく。で、質問紙に答えてもらい、回収してから、報酬にペンをあげます、どっちか選んでください、と二本示す。一方はさっきのペン(A)、他方は別のペン(B)。要因は首振りの方向、被験者間操作。
 結果: ペンAを選んだ人は、横の首振り群では59人中15人、縦の首振り群では61人中45人。なお、質問紙で訊いた音楽の評定とかヘッドホンの評定とか気分とかには差なし。

 考察。首の運動が態度を形成したとして、なぜそれがペンじゃなくて音楽やヘッドホンと結びつかなかったのか? ずっと目の前にあったからかも。あるいは、音楽ってのはもともとconditioned stimulusになりにくいのかも[←はっきりとは書いていないけど、やっぱり古典的条件付けの発想で考えているのだろう]。

論文:心理 - 読了:Tom, Pettersen, Lau, Burton, & Cook (1991) うなずいていると欲しくなる

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