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2018年9月17日 (月)
Bradlow, E.T. et al. (2005) Spatial Models in Marketing. Marketing Letters, 16, 267-278.
仕事&学会発表の役に立つかと思って目を通した奴。10名の連名による概説。なにかの会議のメンバーで書いたのだそうだ。そういう論文はあまり面白くないことが多いと思うんだけど、まあ勉強だと思って...
いくつかメモ:
- マーケティングの空間モデルでは、空間関係を示す変数はふつう外生だけど、まれに推定対象となる場合もある由。DeSarbo & Wu (2001, JMR)というのが挙げられている。へー。
- マーケティングでクリギングを使った例: Bronnenberg & Sismeiro (2002, JMR)。いかん、未読である。先日の学会発表で「エリア・マーケティングのための空間的推測でクリギングを使う例は少ないと思いますが」なんてさらっといっちゃったよ... 不勉強を棚に上げて...
- 連続的距離行列よりも隣接行列のほうが優れている点: (1)実質的にそっちのほうが適切な場合がある。社会的ネットワークとか。(2)連続的距離行列だと端のほうの点は周りに点が少ないことになるので、パラメータにバイアスがかかるし予測がプアになる[←よくわからん... 隣接行列でも同じことじゃないの?] Haining(1997, 書籍)をみよとのこと。
- 空間モデルが表現する空間的パターンには3種類ある。(1)空間ラグ。(2)誤差の空間的相関。(3)空間ドリフト、つまり、モデルのパラメータが位置によって異なる場合。Mittal et al(2004, J.Mktg)というのが挙げられている。以上をフォーマルに書くと, 位置を$Z$として
$y = \rho W y + X \beta[Z] + e, \ \ e \sim N(0, \Sigma(Z, \theta))$
(1)は$\rho W y$, (2)は $\Sigma(Z, \theta)$, (3)は$X \beta[Z]$である。
これからの課題として以下の3点が挙げられている。
- 隣接行列の高次元性。次のような取り組みがあるのだそうだ。
- マルコフ確率場でモデリングする。条件付き確率分布の関数形にたいする制約がきつくなりすぎるのが欠点。
- Pace & Barry(1997 Geographical Anal.): 従属変数が空間自己回帰プロセスに従い、直接的な関係が少ないときに[←隣接行列に1が少ないってことかな?], 最尤解を高速に求めるアルゴリズム。
- LeSage & Pace (2000): matrix exponential spatial specification(MESS)を適用する。これは従属変数の空間的変換に基づいている。[←さっぱりわからん]
- Pace & Zou (2000 Geographical Anal.) 最近隣空間依存(つまり近隣はひとつしかない)という特定のケースにおける、閉形式の最尤解。
- LeSage (2000 Geographical Anal.): 最近隣モデルのベイズ推定における条件付分布の中心の表現。複雑な行列演算が不要。[←MAP推定ってこと?]
- マーケティング変数の地理的パターンを理解したい場合、$X$が内生になるので、それを修正するという問題が生じる。つまり
$y = \tau + X(\tau) \beta + e_1, \ \ e_1 \sim N(0, \sigma^2_1 I)$
$X(\tau) = \mu + \lambda \tau + e_2, \ \ e_2 \sim N(0, \sigma^2_2 I)$
という風に組むわけ。へー、面白いなあ。Bronnenberg & Mahajan (2001, MktgSci.)というのをみるとよさそう。 - 選択行動のメカニズムを理解するという観点からいえば、空間モデルそれ自体は、行動の背後にある構成概念について大したことを教えてくれないだろう。むしろモデル比較が役に立つ。Arora & Allenby (1999 JMR), Aribarg et al.(2002 JMR)をみよ[←面白そう]。いずれにせよ、行動科学者との協働が大事だ、云々。
論文:マーケティング - 読了:Bradlow, et al. (2015) マーケティングにおける空間モデル