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2006年2月17日 (金)

Bookcover アメリカは正気を取り戻せるか―リベラルとラドコンの戦い [a]
ロバート・B. ライシュ / 東洋経済新報社 / 2004-10
 「がんばれリベラルがんばれ民主党」という本。ふうん。
 机の横に積んである本の山のなかに発見して読んだのだが,いつこんな本を買ったのか,どうも思い出せない。「シンボリック・アナリスト」という言い回しの初出を知りたいと思っていたことはあったのだが(読んでいて思い出した),さすがにこの本が初出ではないよな。何を考えていたんだか。まあ面白かったからいいけどさ。

ノンフィクション(-2010) - 読了:02/17

2006年2月16日 (木)

Bookcover 砂の上の植物群 (新潮文庫) [a]
吉行 淳之介 / 新潮社 / 1966-04-27
読んでいて思い出したのだが,中学生の頃に読んでナンダカナアと思ったのであった。このおっさんはええ年してなにをしておるのかと。
今回読んでみたところ,面白い小説だとは思うけれども,やっぱりナンダカナアという感じである。この種の孤独や苦しみは,セックスのかわりにジョギングでもすれば解決するのではないかと。
本編の前身となった短編「樹々は緑か」のほうが,長く残る小説なのではないかと思う。まあ俺がこんなこと考えても仕方がないけどさ。
Bookcover この世の果て (扶桑社ミステリー) [a]
クレイグ ホールデン / 扶桑社 / 2000-08
「夜が終わる場所」の作者の,そのひとつ前の作品。たくさんの登場人物が明確な動機づけなしに転がっていくタイプの小説(なんと呼べばよいのだろうか。ビリヤードの球小説?)。楽しく読み終えたけど,いまいち成功してないと思った。きっと腕を上げていく途中だったのだろうな。
Bookcover 転落の道標 (扶桑社ミステリー) [a]
ケント ハリントン / 扶桑社 / 2001-02
死ぬほど後味の悪い犯罪小説。駄目な人が駄目な人と出会い駄目な曲折を経てさらに駄目になっていく。あまり出来の良い小説とはいえないと思うが,大変気に入った。小説はこうじゃなくちゃいけない。日常を切り裂き,その裂け目から悪夢をどっぷり注ぎ込まなければ。

フィクション - 読了:02/16まで (F)

2006年2月12日 (日)

Bookcover AOL+タイムワーナー 史上最大の合併 [a]
ニナ・ムンク,竹熊 誠 / ディスカヴァー・トゥエンティワン / 2006-01-15

ノンフィクション(-2010) - 読了:02/12 (NF)

2006年2月11日 (土)

Bookcover シブミ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
トレヴェニアン / 早川書房 / 2006-02
Bookcover シブミ〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) [a]
トレヴェニアン / 早川書房 / 2006-02
天性の能力と囲碁の鍛錬によって「シブミ」の境地に達した孤高の暗殺者と,CIAを配下におく超巨大組織との死闘。もうハッタリのオンパレード。ちょっとメタフィクショナルな趣向もあって,いかにもインテリが好きそうな娯楽小説であった。
Bookcover 須賀敦子全集〈第3巻〉ユルスナールの靴・時のかけらたち・地図のない道・エッセイ/1993~1996 [a]
須賀 敦子 / 河出書房新社 / 2000-06

フィクション - 読了:02/11まで (F)

Bookcover ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実 [a]
フィリップ ゴーレイヴィッチ / WAVE出版 / 2003-06
Bookcover ジェノサイドの丘〈下〉―ルワンダ虐殺の隠された真実 [a]
フィリップ ゴーレイヴィッチ / WAVE出版 / 2003-06

ノンフィクション(-2010) - 読了:02/11まで (NF)

2006年2月 5日 (日)

 仕事帰りの電車で,さっき買ったマンガ雑誌を一通りめくったが,乗換駅はまだ遠い。読みかけの論文とノートPCを鞄から引っ張り出した。プログラム例を参考に構造方程式をつくっている最中なのだが,なかなか期待通りの計算結果が得られない。ディスプレイ上にアメーバのように広がった三次元グラフを眺めていると,隣に座っている女性が俺の様子を伺っている。気がついて目を向けるとあわてて無関心を装った。銀色が混じった髪を丁寧に整えた,初老の上品な女性だ。思えば,さっきまでマンガ雑誌を読んでいたのが,今度は英語の文献と小難しそうなグラフだ。ちょっと驚いたのかな,と可笑しくなった。で,乗換駅が近づき,PCを畳んで鞄に詰め込み,立ち上がってふと見やると,隣の婦人は開いていた雑誌を閉じ,揃えた膝の上の小さな茶色のハンドバックにそっと重ねていた。その雑誌は「週刊プロレス」だった。
 まじまじとみつめそうになるのをぐっとこらえ,視線を逸らし向かいの座席に顔を向けると,さっきから不機嫌そうに反り返って座っていた小学生の男の子の片耳に白く光っているのは,イヤホンではなくピアスだった。ホームの階段の人混みのなか,訳のわからない奇声をあげている男がいた。スマートなスーツ姿で銀縁の眼鏡をかけ,アタッシュケースを片手に提げ正面に目を向け背筋を伸ばして足を進めており,ただ時々口を小さく開いて甲高い叫びをあげている点だけが他の人と異なっていた。昼休み,会社の近所の川縁を散歩していたら,デヴィット・リンチの映画のように非現実的に肥満した女が,人目もはばからず細身の男と抱き合っていた。行きつけの大戸屋のウェイトレスは柔道選手らしい。普通の人はどこにいるのか?

 ○○たちに××について尋ねました,ただそれだけ,という調査が世の中には山ほどある。「現代女子学生の携帯電話依存性に関する調査」とか,「高齢者がドーナツに対して抱いている印象に関する調査」とか。なにか検証すべき心理的・社会的なモデルがあるわけでなし,実証的に覆すべき強固な社会的通念があるわけでなし,ちゃんと無作為抽出しているわけでもなし,さりとて明日役立つ知見が得られるわけでもない,そういう調査。
 つまらない仕事だって犯罪ではないし,なんであれ一つの欠陥には言い訳が三個くらいついてくるものだ。調査としての価値についてはどうでもよい。ただたまらなく恥ずかしい。普通の大学生,普通の高齢者,普通の何々について調べましたという,その言い方が恥ずかしい。いつぞやの週刊文春によれば,都心近郊のキャバクラ嬢の二割が大学生なのだそうである。大学の先生が講義時間に回収した質問紙には,キャバクラ嬢の回答だって入っているのだ。キャバクラ嬢女子大生は普通の大学生なのか。コスプレマニアの同人系は? 家業を手伝う孝行娘は?
 ラベルXを持つ人たちがいます,では一般的にいってXはどういう人でしょうか。日常によって規定された薄っぺらい枠組みの中にいてそれを疑わない。いま独裁者があらわれて,苗字がア行から始まる人を強制収容所に送り始めたら,早速「母音開始姓者の向社会性」といった調査をやるのだろう。研究者になり損ねた腹いせにいうわけじゃないけど,ああいう人たちは頭が悪いか,誠意がないか,あるいはその両方だと思う。

 というようなことを考えつつ,自分では結局大した研究ができなかった俺は,いまは安物のネクタイ締めて会社に通い,なんだか不思議な仕事を続けている。それは教育方面の,まあ調査のような仕事なんだけれど,教育の現場についてはろくに知識がないので,現場を知る社員をつかまえては問い質す。子どもの勉強ってどんなものなんですか? 子どもはどんな風に成長するんですか? 親や学校の関わりは? 聞かれた人は宙を見つめてあれこれ言葉を探してくれるのだが,その言葉は不確かに揺らぎ,答える人によって異なり,その人の昨日の答えとも異なる。それもそのはずで,宙を見つめた視線の先にいるのは「普通の子ども」ではなく,その人がかつて接した太郎くんや花子さんなのだ。口ごもる相手に俺は重ねて尋ねる。なるほど,そういう子もいるんですね。で,それは子ども一般についていえることなんでしょうか? 思うに俺は,頭が悪いか,誠意がないか,その両方なのだろう。

雑記 - 頭が悪いか誠意がないかその両方

Bookcover 怪力の母 2 (SPコミックス) [a]
平田 弘史 / リイド社 / 2006-01-20
戦国武将が村はずれのあばら屋の戸を開くと,武家の子でありながら芸術に執着する不肖の長男が,密かに笛を削っている。壁に掛けられた絵と彫刻の数々,どれも素人の域を超えている。緊迫する沈黙を父が破る。「弾いてみよ」「はい」二人は相対し,息子は自ら考案した六弦楽器を奏で,やおら歌い始める:
 D 星は G なぜ A7 あるの D か
 D 月は G なぜ Em 夜 A7 輝くの D か
 D 風は G なぜ Em 吹くのか
 D 夏は G なぜ A7 あつ D く 冬は G なぜ Em 寒いの D か
結局息子は出奔し,放浪の芸人として都に向かう。賊に襲われ身ぐるみを剥がれる際には:
 G 我身 Bm 守らんと Em すればこ Em7/D そ
 C 人の Bm7 歴史は Am 殺しの歴 D7 史
 G 傷つけ Bm7 合いの Em 歴史では Em7/D なかったのか
 ああ Bm7 我 Em/B は ああ Bm7 我 Em/B は Am7 フー D7/A フー
別にギャグではなく,著者はたぶん大真面目なのだが,どうしても噴き出さずにいられない。怪作である。

コミックス(-2010) - 読了:02/05まで (C)

Bookcover 山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7) [a]
森 鴎外 / 岩波書店 / 2002-10-16
ほぼ同内容の新潮文庫を持っているのだが,「じいさんばあさん」読みたさに購入。
Bookcover しろねこくん [a]
べつやく れい / 小学館 / 2003-02
洒落ているなあ。著者はたぶん別役実の娘さんだと思う。

フィクション - 読了:02/05まで (F)

2006年2月 1日 (水)

Bookcover かみちゅ! 1 (電撃コミックス) [a]
鳴子 ハナハル,ベサメムーチョ / メディアワークス / 2006-01-27
なんとなく買っちゃったのだが,年齢層的に無理のある内容で,俺はいったいなにをしておるのかと思いながら読了。

コミックス(-2010) - 読了:02/01まで (C)

Bookcover 手術の前に死んでくれたら―ボスニア戦争病院36カ月の記録 [a]
シェリ フィンク / アスペクト / 2004-11

ノンフィクション(-2010) - 読了:02/01まで (NF)

Bookcover 銀齢の果て [a]
筒井 康隆 / 新潮社 / 2006-01-20
僧侶の唄う劇中歌「葬いのボサ・ノバ」は楽譜がついている(山下洋輔作曲)。小一時間研究した末,ようやくメロディーを覚えたが,すごく難しい。「しにーみずが のーどにつまってー ごろーごろと 鳴ーるそのおーとがー」

フィクション - 読了:02/01まで (F)

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