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2008年4月29日 (火)
不安な経済/漂流する個人―新しい資本主義の労働・消費文化
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リチャード セネット / 大月書店 / 2008-01
グローバル資本主義によって,労働が,そして文化がいかに不安定なものになったか,という話。それに対抗する「文化的な錨」として,著者は物語性,有用性,職人技(クラフトマンシップ)を挙げている。物語性を回復させる試みの例は,職場における共同体,ジョブ・シェアリング,ベーシック・インカム。有用性の回復の例としては,公益に関わる仕事や家事労働の地位向上(なるほど,社保庁の役人の悪口をいってりゃいいってもんじゃないよな)。そして職人技とは,高度資本主義が求める精神的流動性(マズロー的な理想自己)の対抗概念であって,コミットメントの客観的価値を信じるという美徳を持つ。「何も手に入らずとも,何ごとかを正しくおこなうことが真の職人精神なのである」
職人技の話は面白いと思ったけど,本当に社会を安定化させる鍵になりうるのか,よくわからない。「激安の給料で,職人の誇りを持って働くバイク便のお兄さん」というのは,ずいぶん都合のよい流動的労働力だよなあ。
ノンフィクション(-2010) - 読了:04/29まで (NF)