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2008年5月20日 (火)

都合により論文漬けの一日であった。

Lebreton, J.M., Ployhart, R.E. Ladd, R.T. (2004) A Monte Carlo Comparison of Relative Importance Methodologies. Organizational Research Methods. 7(3), 258-282.
相対的重要度の特集号に載った論文。相関や偏回帰係数やJohnsonのepsilonのうち,相対的重要度指標として良いのはどれかを調べるために,指標の数や基準関連妥当性や多重共線性や単純構造の有無などを直交計画で動かしてモンテカルロシミュレーションをおこなう。
シミュレーションのやりかたは勉強になったけど。。。うーん。この論文が調べているのは要するに,Budescuのdominance 指標と近い振る舞いをするのはどの指標か,ということなのである。そこんところに納得できるかどうかで,評価が分かれると思う。
論文の前半で,いかにdominance指標が重要度の指標として優れているかを力説しているのだけれど,それは結局重要度の定義によって決まることなんじゃないか,という気がして仕方がない。というか,独立変数間の関係についての洞察を求めず,ただ重要度のランク付けを求めるという態度そのものが,データ解析の視点としていかがなものか,という気がしてしまう。

Budescu, D.V., Azen, R. (2004) Beyond Global Measures of Relative Importance: Some Insights from Dominance Analysis. Organizational Research Methods. 7(3), 341-350.
同じ特集号の巻末論文。dominance analysisの使い方あれこれの紹介とか,今後の展開の紹介とか(従属変数が複数の場合とか)。
dominance analysisでは,行にサブモデル(独立変数がp個あったら2^p-1行),列に独立変数(p列),セルに「そのサブモデルに当該の独立変数を入れた場合と抜いた場合のR2の差」を入れた表をつくるが,その表からいろいろな定性的情報が読み取れるよ,というくだりがあった。「X1を考慮したときはX2よりもX3が重要だけど,考慮しないときはX2のほうが重要なのね」とか。
そういった情報がどのくらい有り難いのか,仮に有り難いとしてそれを読み取るために最適な方法がdominance analysisの表なのかどうか,俺にはどうもよくわからないのだけれど(graphical modelingのほうがいい場合もありそうだ),それはともかく,ここで示唆されている方向は,ただ重要度のランク付けを求めるんじゃなくて独立変数間の関係について探索しなさい,ということだと思う。
我が意を得たりという気分だが,でもそういう探索のためには,単相関と偏回帰係数を両にらみしつつ考えるような,ローテクな方法でも十分役に立つんじゃないだろうか? 相対的重要度指標の価値はどこにあるんだろうか,と再び考え込んでしまう。うーん。

論文:データ解析(-2014) - 読了:05/20まで (A)

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