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2009年2月13日 (金)

Millsap, R. & Tein, J.Y. (2004) Assessing factorial invariance in ordered-categorical measures. Multivariate Behavioral Research. 39(3), 479-515.
順序尺度の変数が指標になっている多母集団SEMモデルで測定不変性を調べる方法(長い...)についての論文,第二弾。イキオイがついているうちに,と思って目を通した。
論文の焦点は,測定不変性を調べる具体的な順序というよりも,モデルの同定条件にあるようであった。関心のあるところを抜き書き:

順序カテゴリカル指標がp個あるとする。k番目の群に属するi番目の人のj番目の指標の得点をX_{ijk}とする。どの指標も値\{0,1,...,c\}を取り,その値は潜在反応変数X^*_{ijk}と閾値\nu_{jk1},...\nu_{jk(c-1)}で決まるものとする。潜在反応変数の平均ベクトルを\mu^*_k,潜在反応変数の共分散行列を\Sigma^*_k,因子分析モデル(因子数r)の項目切片ベクトルを\tau_k, 因子パターン行列を\Lambda_k, 独自因子の分散をあらわす対角行列を\Theta_k, 因子共分散行列を\Phi_k,因子平均行列を\kappa_kとする。

順序カテゴリカル指標の多群因子分析におけるモデル同定のためには,たとえば以下の手順に従うと良い。

因子構造が1因子構造ないし単純構造の場合:

  1. ある群で,潜在反応変数の平均を0,分散を1に固定する(\mu^*_k=0, Diag(\Sigma^*_k)=I)。これでこの群の閾値パラメータを同定できる。
  2. 上の群で因子平均を0に固定する(\kappa_k=0)。
  3. すべての群で,項目切片を0に固定する(\tau_k=0)。また,各因子について1項目選び,負荷を1に固定する(この項目のことを基準変量と呼ぶことにする)。
  4. あるmを選び(二値変数の場合にはm=1),すべての項目についてm番目の閾値に群間等値制約を置く(\nu_{jkm}=\nu_{jm})。さらに,それぞれの基準変量については,もうひとつの閾値についても群間等値制約を置く。二値変数の場合は,基準変量の潜在反応変数の分散を(たとえば)1に固定する。

p+r個の閾値を不変にするだけでよく,基準変量のすべての閾値を不変にするわけではないことに注意。また,因子平均,因子共分散行列,独自因子分散を制約していないことに注意。

因子構造が1因子構造でも単純構造でもない場合,モデル同定の十分条件は指標が量的な場合でさえあきらかでないが,同定の問題を量的な場合と同じところにまで持っていくためには:

  1. ある群で,潜在反応変数の平均を0,分散を1に固定する(\mu^*_k=0, Diag(\Sigma^*_k)=I)。これでこの群の閾値パラメータを同定できる。
  2. 上の群で因子平均を0に固定する(\kappa_k=0)。
  3. すべての群で,項目切片を0に固定する(\tau_k=0)。また,各群のパターン行列に制約を置いて,回転の観点から見てユニークであるようにする。その方法はいろいろあるが,一般的なやり方は,r個の項目を選び,そのr行からできる行列を単位行列にすることである[その因子にしか負荷を持たない項目を確保し,それを基準変量にするということだろうな]。
  4. ふたつのmを選び(項目が二値の場合にはm=1だけ),すべての項目について,m番目の閾値に群間等値制約を置く(\nu_{jkm}=\nu_{jm})。項目が二値の場合は,さらにすべての潜在反応変数の分散を1に固定する(Diag(\Sigma^*_k)=I)。

測定不変性の検討という観点から見ると,潜在反応変数の分散を1に固定してしまうことには欠点がある。独自因子の共分散行列\Theta_kの不変性を評価するのが難しくなってしまうのである。たとえば,負荷\Lambda_kが不変で,すべての群の潜在反応変数の分散が1に固定されているとしよう。このとき,共通因子の共分散行列\Phi_kが群間で異なれば,独自因子の共分散行列\Theta_kも群間で異なってしまう。この問題を避けるためのもうひとつの方法は,独自因子の分散を1にしてしまうことである(\Theta_k=I)。Mplusではこの制約を「シータ・パラメータ化」と呼んでいる。測定不変性の検討に際しては,連続潜在変数の分散の不変性に関心があるのでない限り,「シータ・パラメータ化」が適切である。

 測定不変性の検討に際しては,まず負荷の不変性を検討し,それから閾値の不変性を検討し,最後に独自因子分散の不変性を検討する,という順番が想定されているようであった(先週読んだTemme(2006)の意見と異なる)。もっとも,その順番が良いのだという明確な議論はなかったように思う。
 LISRELをつかったときとMplusをつかったときのモデルの違いについて詳細な説明があった。LISRELの部分は飛ばして読んだので詳しくはわからないが,閾値の指定があまり細かくできないので,この問題についてはMplusのほうが有利らしい。
 Millsap先生はwebでこの論文のMplusのシンタクスを配っておられる。神のような人だ。

 去年,非常勤先の講義に,友人のKくんがデータを取りに来たので,ついでに研究の話を喋ってもらい,さらには昼飯をつきあってもらった。その際,論文を手に入れるのが大変なんだよね,という話をしたら,国会図書館で手に入りますよ,とKくんがいう。いやいや,実は国会図書館の雑誌って案外そろってないのよ,と偉そうなことを云ったが,実は関西館の郵送取り寄せのことしか頭になかった。で,このあいだ国会図書館のwebをよくよく見てみたら,なんと,東京館に足を運べば館内端末からものすごくたくさんの雑誌に全文アクセスできるし,一枚20円くらいで印刷もできるのであった。知らなかった。嘘ついちゃった。
で,今週時間を作って会社を抜け出し,上記論文をはじめ,手に入れたかった論文を10本ほど印刷してきた。国会図書館は事実上の初体験(二十年ほど前に行ったかもしれないが,記憶にない)。ロッカーにカバンを預け,妙なビニール袋に手荷物を入れるあたりから,もうワクワクしてしまった。大きな図書館は,大きいというだけでなんだか楽しい。あの立ち入り禁止の暗い階段を間違えて下りたら,村上春樹の小説みたいに,謎の老人に監禁されて無理矢理読書させられ,あとで脳みそをちゅうちゅうと吸われちゃったりして。。。などと空想が膨らむ。今度は勤務時間じゃないときに,ゆっくり探検してみたいものだ。

論文:データ解析(-2014) - 読了:02/13まで (A)

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