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2010年3月27日 (土)

Hofmeyr, J., Goodall, V., Bongers, M., Holtzman, P. (2008) A new measure of brand attitudinal equity based on Zipf distribution. International J. Market Research, 50(2).
 消費者にある商品カテゴリのブランドリストを示し,その人の考慮集合(買う気がなくはないブランドの集合)を答えさせたあとで,そのなかにある各ブランドについて,なんらかの評価(たとえば購入意向)をx件法で答えさせる。で,評定値をいったん順位データに落としてしまい,そこからその人にとっての各ブランドの価値を算出する。なぜ順位を連続量へと逆算できるのかというと,世の中の多くの現象がそうであるように,ブランド・エクイティもまた一種のべき乗法則に従うだろうから(大きさ∝1/(順位^s)),という理屈である。で,世界各国の消費者調査データに基づき,考慮集合のサイズ別に指数sを推定する。得られた式を使うと,スキャン・パネル・データでの売上シェアや市場シェアを,簡単な態度調査でもってすごーく正確に予測できました。という論文。

 背景としては。。。まず90年代から,企業にとってブランド・エクイティ(ブランドの資産価値)の構築が大事だ,という話が出てきた。じゃあ現在のブランド・エクイティをどうやって測るのかというと,(A)財務データを使うやりかた(割引キャッシュフローとか。あああ面倒くさい),(B)過去のマーケティング活動のROIを推定するやり方(マーケティング・ミックス・モデルとか),(C)消費者の態度データを使うやりかた,がある。ま,M&Aに携わる投資銀行マンなどは,サイコメトリクスによるブランド価値評価なんて鼻もひっかけてくれないだろうけど,消費者相手のマーケッターが自分たちの活動のアウトカム指標として態度データを調べようとするのは自然だし,世の中にいろんな測定方法があるって素晴らしいことですよね。
 で,(C)消費者調査でブランド・エクイティを調べる方法にも,(C1)広告で使うような効果階層モデルに基づくものとか(認知から好意を経由して忠誠にいたる,というようなやつ),(C2)好意やらユニークさやらいろんなことを尋ねて組み合わせるやつとか,さまざまなやりかたがある。そのなかに,(C3)とにかく各ブランドに対する関与の強さを直接聞いちゃえばいいのよ!というアプローチもあって,その旗手がこの論文の第一著者である。この論文はブランド評価というよりもサーヴェイ方法論寄りの内容で,超シンプルな態度評定から売上をうまく予測できますよ,というのが売り。
 雑誌掲載時にざっと目を通していたのだが,このたび用事があって最初から読み返した。勤務先の業務内容とあまりに密接に関連しているので(そもそも著者らは勤務先の人である),感想は差し控えるが,わかりやすい良い論文だと思います。

 ほんとはこんなメモではなくて,「平家物語」の異常なまでの面白さについて語り倒したいのだが。。。いったん書きはじめると時間がかかりそうで,妙に気が重い。

論文:マーケティング - 読了:Hofmeyr et. al. (2008)

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