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2010年11月22日 (月)
偶然とは何か――その積極的意味 (岩波新書)
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竹内 啓 / 岩波書店 / 2010-09-18
なんというか,偉い先生だけに許されるスタイルの本で,あまりに広い視野に基づいて書かれているが故に,ちょっと散漫な印象も受けてしまう。いっぽう,ああそうか,なるほど。。。と目を見開かされるような部分もあった。
- 偶然現象を発生させるメカニズムとして,(1)初期状態のわずかなちがいが結果に大きなちがいをもたらす場合,(2)互いに無関係な複数の因果関係が同時に働いている場合,(3)微細な多数の原因が働いている場合,の3つが挙げられる。で,三番目の変動は正規分布に従うとみなされることが多いが,それは多数の変動が加法的に累積されることを前提としていることに注意しなければならない(1章)。なるほど。。。
- 客観確率だとか主観確率だとかというのは確率の意味づけであって確率論ではない。確率の数学理論は,確率の抽象的定義と少数の公理の上に成り立つのであって,確率という概念がどのような意味を持っているかという点とは独立に展開される(2章)。そうか。。。
- 「ネイマンは統計的方法は帰納論理を表すものでなく『帰納的行動』を示すものであると主張したが,ネイマンの考え方は統計的品質管理のように大量生産工場において多数のロットを処理する場合にあてはまる。これに対してフィッシャーの考え方は,実験結果から客観的判断を下すときの論理を表すものであり,またベイジアンの論理は偶然変動をふくむ場に直面して行動する主体(個人,企業)の立場を表していると考えられる。だからそれらを同じレベルで互いに相容れない立場を表しているものと見る必要はない」(3章)。そうなのか。。。
データ解析 - 読了:「偶然とはなにか」