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2011年5月29日 (日)
シェイクスピア全集 (〔23〕) (白水Uブックス (23))
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ウィリアム・シェイクスピア / 白水社 / 1983-01
ハロルド作石さんが小学館で連載している「七人のシェイクスピア」を布団に寝転がってめくっていたら,ふいにシェイクスピア様の本を読んでみたくなり,たまたま本棚にあった「ハムレット」をカバンにつっこんで出勤した。で,昼飯を食べにいった近所の店でパラパラめくり始めたら,これが無闇に面白くて,パスタそっちのけでのめり込んで読み続ける羽目になった。
なにしろ昔の戯曲だから,最初はちょっとハードルがある。俺がひっかかるのは,たとえば芝居の冒頭部分,夜中の城壁で兵士が誰何する場面。「止まれ!だれだ!」「この国の味方。」「デンマーク王の臣下。」 なんなの,このやりとりは? 素直に名を名乗ればいいじゃん!!
というような,おそらく詳しい人が聞いたら鼻で笑っちゃうようなハードルをいったん乗り越えると,これがほんとに面白い。昔読んだときは,これほどまで身近な物語だとは思わなかったのだが。
今回読んでいてもっとも面白かったのは,オフィーリアの父親のポローニアス。冗長な長台詞で半径数メートルを埋め尽くしながら,実は状況を冷徹に操作している,でも人間観はあまり深くない,というような人。いるいる!こういう人!と,膝を打つような思いであった。
ポローニアスは中盤でハムレットに刺し殺されてしまうから,ただの脇役だという印象だったのだが,思えばとても重要な人物である。こういうおっさんが悲劇を引き起こすともいえるし,こういうおっさんがいることでカタストロフがうやむやになる,ともいえる。ハムレットがありふれた青年であるのと同様に,ポローニアスもまた,どんな組織にも必然的に生まれてくるタイプなのではないか。。。
などということを考えながらふと頭を上げると,裏原宿のおしゃれなカフェのカウンターの片隅で,飲みかけのコーヒーを冷めるに任せ,時計にも気づかぬままに,なぜかひたすらシェイクスピアに没頭する,ヨレヨレのスーツの中年男,それがわたくしである。いろんな意味で浮いている。客観的にみて,この男は絶対出世しないタイプだ,と痛感した。
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
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デイヴィッド・ゴードン / 早川書房 / 2011-03-10
海外ミステリには手を出さないように気をつけているのだが,わたくしの愛する「ダメ男一人称小説」に属する新作ということであれば仕方がない。
実際のところは,すごく上出来なライト・ノベル,という感じであった。主人公はうらぶれた中年作家とはいえ,まだ30代だと思うし。やたらに頭のいい生意気な女子高生が相棒だったりするし。まあ,週末のエンターテインメントとしては申し分ない小説でありました。
フィクション - 読了:「ハムレット」「二流小説家」