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2011年5月29日 (日)
浪費するアメリカ人――なぜ要らないものまで欲しがるか (岩波現代文庫)
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ジュリエット・B.ショア / 岩波書店 / 2011-03-17
久々に引き当てた超・大ヒット。面白くて面白くて,読むのに時間がかかった。
原著は1998年。アメリカの中産階級は過剰な消費とそのための長時間労働によって不幸になっている,もっと減速しなきゃだめだ。という内容。サブプライム・ショックを経たいまとなっては,本の後半での提言についてはちょっと事情が変わってしまっているかもしれないけれど,前半部分の調査結果を積み上げていくところが大変に面白かった。
いくつかメモしておくと...
- Belk, et.al. (1984JCR): 子どものブランド知覚についての実証研究。日本に類似の研究はあるのかしらん。小学校高学年から縦断で調べたら面白そうだ。家庭の社会的地位の効果と中学校の公立/私立の差を統計的に分離できるかもしれない。
- Bearden&Etzel(1982JCR) 「消費が人目につくタイプの商品は購入における準拠集団の影響が強い」というパラダイムの研究の始まり。
- ブランド品に金を使うのはどんな人か。ブルデュー流にいえばハビトゥスで決まるわけだが,これは実証研究が山ほどあって,すでに1949年にデューゼンベリーという人が,ちゃんと収入をコントロールしたうえで,アフリカ系アメリカ人がステータス品を買わない傾向があることを示している(邦訳もあるらしい)。教育水準の影響を示した研究もある(もちろん,水準が高い方が買いやすい)。
- ブランド品購買と心理的特性との関係に焦点を当てた研究もあるのだそうで,Wicklund&Gollwitzer(1982)は経営学専攻の学生の調査で,成績が悪い人ほど高価な腕時計etc.を買いやすいことを示している(状態不安が高いからブランド品購入に走る,という解釈でいいのだろうか?)。またGould&Barak(1988, J. Soc. Psy)は自己意識の高さがブランド品購入につながることを示している。 いっぽう,パーソナリティとの関連はあまりはっきりしない由。
- Birdwell(1968): 所有者の車と自己像の一致の程度は高価格帯で強い。(←収入はコントロールできているのだろうか?)
- 消費を駆動する要因としてアイデンティティとステータスを別々に扱うのはおかしい。伝統的アイデンティティが衰微したとき,社会的ステータスの決定因として消費が前景化するのである。(←なるほど)
- Feinberg(1986JCR): 架空の買い物をさせる実験。実験室のすみにマスターカードのロゴマークを置いておき,これは他の実験のためのものだから無視してね,と伝えておく。すると,ロゴマークがなかった群にくらべて,実験中に使う金額が高くなる (←面白い! 「心的財布」がプライミングで切り替わるのかしらん。ロゴマークを閾下提示したらもっと面白いと思うのだが)
- 著者らの調査: 「周りの人々についていくこと」の重要性を尋ねると,,多くの対象者が重要でないと回答した。しかし貯蓄額や支出額の重回帰分析では,ほかのいろいろな変数をコントロールしても,「自分の準拠集団に比べて自分が豊かか」が強い要因となっていた(豊かでないだと思うと支出が増える)。またテレビ視聴時間も強い要因になっていた(週1時間のテレビ視聴で支出が208ドル減る)。ははは。
マーケティング - 読了:「浪費するアメリカ人」