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2011年7月12日 (火)

Bookcover オークション理論の基礎―ゲーム理論と情報科学の先端領域 [a]
横尾 真 / 東京電機大学出版局 / 2006-06
仕事の都合で読んだ。前半は、ゲーム理論やゲーム木探索のすごく入門的な紹介。後半はオークション理論の紹介。こちらはまったくはじめて接する話題なのでレベルがよくわからないのだが、はたして入門書の範囲内に収まっているのか,どうか...。細かいところは飛ばして読んだ。総じてわかりやすい説明だったとは思うけれど。
 オークションの研究の多くは片方向オークション(買い手と売り手のうち一方が単数、他方が複数である場合)についてのもので、証券取引のようなダブル・オークションの研究は少ないのだそうだ。一般にダブルオークションでは、誘因両立性(正直が最良の策であること)、パレート効率性(「これ以上誰かをハッピーにするためには他の誰かに泣いてもらわなきゃ」という状態のこと)、個人合理性、の3つを同時に満たす取引プロトコルは存在しない由。ふうん。
 ちょっと笑っちゃったところをメモ:二人でじゃんけんして、グーで勝ったら「グリコ」で3歩進む、パーなら「パイナツプル」チョキなら「チヨコレート」でそれぞれ6歩進む、という遊びをゲームとして分析すると,グーで勝った場合の利得が1、チョキないしパーで勝った場合の利得が2であるようなゼロサムゲームになっており、ナッシュ均衡はグー40%, チョキ40%, パー20%の混合戦略である。。。という説明のあとで、「ただし、自分の子供を相手にこのゲームをプレイしている場合には、子供が勝つまで家に帰れないなどのほかの問題が生じますので、むやみに勝っても自分の効用は最大化されません」。ははは。子ども同士の場合でも、あんまり距離が開いちゃうと、勝っている側もなんだかさみしくなっちゃいますね。次第に日が暮れて,相手の手がみえなくなっちゃったりして。

データ解析 - 読了:「オークション理論の基礎」

2011年7月11日 (月)

Bookcover 関東大震災 (文春文庫) [a]
吉村 昭 / 文藝春秋 / 2004-08
関東大震災でもっとも多数の死者を出したのは本所の陸軍被服廠跡で,この空き地に避難してきた人々が猛火と旋風に巻き込まれ,三万八千人が亡くなった。生き残った人の壮絶な証言といったら,もう。。。
 いま調べたら,この場所は現在の都立横網町公園,両国駅の北にあるらしい。

日本近現代史 - 読了:「関東大震災」

Bookcover 消費社会の魔術的体系 (明石ライブラリー) [a]
ジョージ リッツア / 明石書店 / 2009-04-09
リッツァという人は,社会科学分野で大ヒットした「マクドナルド化」という概念とともに生きる,なんというか一発屋的な社会学者なのかと思っていたのだが,実はエライ人だったんですね。存じ上げませんでした。
 この本はそのリッツァさんが書いた,現代消費社会論概説といった感じの本。マルクスにウェーバー,ボードリアールにギ・ドゥボールまで,使える理論はなんだって使いますという折衷的な態度で,平易に書かれた本であった。
 先日読んで感銘を受けたジュリエット・ショアの消費社会批判について,過剰な消費について人々に反省を促しても世の中変わりゃしないでしょう,人々を消費に駆り立てる構造に目を向けなければ... と書いている。確かにそれはそうなんだけど,でも,社会分析としての正しさと社会変革の駆動力とはちょっと別の問題で,世の中を変えるのは往々にして構造が見えてない人の声なんじゃないか,とも思う。「アンクルトムの小屋」は奴隷解放問題に大きな影響を与えたそうだが,ストウ夫人がアメリカ南部の社会構造に深く思いを致していたかどうかはわからない。その場に冷静な社会学者がいたら,いや奴隷制度はこの社会に深く組み込まれているのであり,そこだけ取り出して批判してもしょうがないですよ... などといったのではなかろうか。

哲学・思想(2011-) - 読了:「消費社会の魔術的体系」

Bookcover ルイ・ボナパルトのブリュメール18日―初版 (平凡社ライブラリー) [a]
カール マルクス / 平凡社 / 2008-09
意外や意外,最近では一番のオモシロ本であった。いったいなにが面白いか,手に取ってみないと予想もつかないものだ。
 この本で描かれているのは,二月革命(1948)からナポレオン三世のクーデター(1851)にいたるいきさつであり,マルクスさんがこの作品を最初に書いたのはその翌年。きわめてジャーナリスティックな内容なのである。さらに,マルクスの過剰なまでの饒舌さときたら。いまの我々にとっては社会科学の古典だが,当時はちょっとしたキワモノだったのではないかしらん。
 一番面白かった箇所をメモ。第二共和制下の1949年,小市民を支持基盤とする民主派が労働者と手を組むくだり。「資本と賃労働という二つの極をともに止揚するためではなく,それらの対立を和らげて調和へと変換させるための手段として,民主的=共和制的諸制度が要求されるのである」「この内容は,民主的方法での社会の改造であるが,小市民の枠内での改造である。小市民は原理的に利己的な階級利害を貫徹しようとするものだというような,視野の狭い思いこみをしてはいけない。彼らはむしろ,自分たちの解放の特殊な諸条件は普遍的な諸条件であり,その内部でのみ,近代社会は救われ,階級闘争は避けられるのだ,と信じているのである」 なるほどー。いいこというねカールくん。
 「同様に,民主派の議員たちはみな商店主であるか,あるいは商店主を熱愛している,と思い描いてもいけない。彼らは,その教養と知的状態からすれば,商店主とは雲泥の差がある。彼らを小市民の代表にした事情とは,小市民が実生活において超えない限界を,彼らが頭の中で超えない,ということであり,だから物質的利害と社会的状態が小市民を実践的に駆り立てて向かわせるのと同じ課題と解決に,民主派の議員たちが理論的に駆り立てられる,ということである」 おおお。議員さんたちについて考えるときはこういう見方をしないといけないのか。目からウロコですカールさん。(←丁寧語に格上げ)

Bookcover 異形の日本人 (新潮新書) [a]
上原 善広 / 新潮社 / 2010-09
人物ノンフィクション。劇画作家・平田弘史さんの「血だるま剣法」糾弾事件についての章を読みたくて手に取った。
 平田劇画の初期傑作が描かれたのは学生運動の全盛期であり,読者層は運動から疎外された少年労働者だった。「60年,70年安保の学生運動についてどう思うか,平田に訊ねたことがあるのだが,彼は即『あんなのはジャリのお遊びだッ』と断じた。私はその断固とした物言いに,かえって平田の暗く陰鬱な青春を垣間見るような気がした」

Bookcover ナポレオン帝国 (ヨーロッパ史入門) [a]
ジェフリー エリス / 岩波書店 / 2008-12-18
ナポレオン期フランスの政治・経済・社会について幅広く論じた本。そんなに真面目に勉強する気はなくて,たまたま手に取っただけだったので,ついつい斜め読みになってしまった。

Bookcover 密閉国家に生きる―私たちが愛して憎んだ北朝鮮 [a]
バーバラ デミック / 中央公論新社 / 2011-06
北朝鮮の北部・清津の若者たちの姿を描いたノンフィクション。著者はLAタイムズの記者で,この本は脱北者への聞き取りに基づいて構成したもの。ページをめくりはじめたら止まらなくなり,半日つぶして一気に読み終えた。

ノンフィクション(2011-) - 読了:「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」「異形の日本人」「ナポレオン帝国」「密閉国家に生きる」

Bookcover 父の暦 (ビッグコミックススペシャル) [a]
谷口 ジロー / 小学館 / 1994-11
谷口ジローの文芸路線の読み切り。94年の作品。父の死をきっかけに父との葛藤と向き合う息子の話。
 谷口ジローさんは海外で評価の高いマンガ家なのだが,これも海外に持っていったらきっとものすごく受けるだろうと思った(もう翻訳があるのかもしれないが)。戦後の鳥取というローカルな舞台を描きながら,普遍性のある物語だ。

Bookcover 百鬼夜行抄 20 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) [a]
今 市子 / 朝日新聞出版 / 2011-07-07

Bookcover ハチワンダイバー 20 (ヤングジャンプコミックス) [a]
柴田 ヨクサル / 集英社 / 2011-06-17

Bookcover 団地ともお 18 (ビッグコミックス) [a]
小田 扉 / 小学館 / 2011-06-30

Bookcover 遠野モノがたり (バンブーコミックス) [a]
小坂 俊史 / 竹書房 / 2011-05-27

Bookcover リバーシブルマン 1 (ニチブンコミックス) [a]
ナカタニD. / 日本文芸社 / 2011-05-28

Bookcover 高校球児 ザワさん 7 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [a]
三島 衛里子 / 小学館 / 2011-06-30

コミックス(2011-) - 読了:「父の暦」「百鬼夜行抄」「遠野モノがたり」「リバーシブルマン」「ハチワンダイバー」「団地ともお」「高校球児ザワさん」

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