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2011年12月10日 (土)

Bookcover 仏教、本当の教え - インド、中国、日本の理解と誤解 (中公新書) [a]
植木 雅俊 / 中央公論新社 / 2011-10-22
著者はお経をサンスクリット語の原典と漢訳で比較する研究を行っておられる方なのだそうで,その成果を素人向けに書いた本。意図してのことであろう,世間話を織り交ぜたユルい感じの文章になっている。常勤の大学教員などではないようだが,なにをして生計を立てておられるのだろうか,などと余計なことを考えたりして...
 「誤解」という強い言葉を使っているので,サンスクリット語の原典が正しい,あとは全部まちがった仏教理解である,という主張が展開されるのかと思ってびくびくしたのだが,たとえ誤解であってもその豊かさに目を向けようという立場であった。
 日本における漢訳仏典の解釈はしばしば断片を取り出した恣意的なものになったのだそうで,たとえば日蓮は法華経のなかのあるくだりについて,これは「自我得仏来」からはじまって「速成就仏身」で終わっている,「自」ではじまって「身」で終わってるんだから,これは最初から最後までで自分自身のことなのだ,と説いたのだそうだ。しかし実際には,「自我得仏来」は正しくは「我れ仏を得てよりこのかた」,つまり「自」はfromを意味する。著者いわく,日蓮はそんなことはわかっていただろうし,これはただの語呂合わせ,でもそれを通して言っている内容は素晴らしい,とのこと。面白いなあ。

哲学・思想(2011-) - 読了:「仏教,本当の教え」

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