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2011年12月19日 (月)
午前3時の危険地帯 4 (Feelコミックス)
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ねむようこ / 祥伝社 / 2011-12-08
2011年に読んたマンガのなかで,これがベスト作品。ここまで心に染みいるマンガは,本当に久しぶりである。最終巻を入手し読み終えた翌日などは,ふと気がつくとこのマンガのことを考えていた。
祥伝社の女性コミック誌に連載されていたごくごく他愛ない恋愛マンガが,なぜにこんなに中年男の胸を撃つか,とあれこれ考えたのだが(ヒマなのか私は),このマンガにはいくつかの重要な美点がある。第一に,物語の一方の主役である,イケメンで女たらしでお調子者,でも心に深い空虚を抱えているパチンコ屋アルバイト・宮下くんの人物造形がとても良い。第二に,超地味かつ超奥手なヒロイン・たま子が,一番肝心なところで感情をあらわにすることができず,能面のような無表情の陰に隠れてしまうところ,あまりの共感に切なくなってしまう。第三に,富山の実家が良い。基本的に東京の閉塞した空間のなかで進んできた物語が,終盤にたま子が富山の実家に逃げ帰ってしまうところでサーッと視覚的広がりを持つのだが,この実家というのがまた良く描けているのである。話の展開の都合上必要な概念としての田舎ではなく,人々が日々の暮らしを営むひとつの世界としてのリアリティがある。頁でいえば短いけれど,方言に背景に,さぞや手間をかけたのだろう。第四に,とにかく,もう,たま子が可愛い。
週末を費やして何度も読み返した末につくづく感じるのは,奇妙な感想だが,ああ政治って大事だなあ,ということである。いや,物語自体には政治のセの字も出てこないのですが。タマちゃん(←もはやちゃん付け)が富山に帰ったとしても,地方経済は疲弊しているし,パチンコ屋店員で生計を立てるというのもなかなか厳しかろうし... 特別な技能を持つわけでもないごく平凡な二人が,ごく平凡に恋をしてごく平凡な家庭を持ち,さほど苦労せずに子育てできるような,そういう地域社会を私たちは持ちたいものだ,などと,どこかの議員の演説のような感慨を持った次第である。タマちゃんのせいで。
進撃の巨人(6) (講談社コミックス)
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諫山 創 / 講談社 / 2011-12-09
銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス)
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荒川 弘 / 小学館 / 2011-12-14
コミックス(2011-) - 読了:「午前三時の危険地帯」「進撃の巨人」「銀の匙」