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2012年4月 9日 (月)

von Davier, M., Gonzalez, E., & Mislevy, R.J. (2009) What are plausible values and why are they useful? IERI Monograph, 2, 9-36.
 たまには目の前の仕事と無関係な話を読みたくなり目を通した。 いますぐに関係ないとはいえ、このさき役に立ちそうな気もするし。
 PISAやTIMSSといった大規模教育測定の話のなかでときどき見かける、plausible value (PV)という概念についての解説。なんて訳せばいいのかわからないが、いまwebで調べたら「推算値」と訳している人がいた。
 IERIというのはアメリカのETSと、アムステルダムのIEA (Int. assoc. for the Evaluation of Educational Achievement)というところが共同でやってる組織らしい。第1, 第2著者はETSの人。三人目のMislevyという人がこの概念の主唱者だと思う。
 すごくわかりやすい説明であった。PVってのは要するに、項目反応理論でいうところの潜在特性 Θ の事後分布を個人ごとに推定し、そこからランダム・ドローした値のことらしい。個人の分析ではなく集団特性の分析に用いるもので、ランダム・ドローした値の平均や分散は、Θの点推定値の平均や分散とはちがって不偏推定量となる。ふつうはこれを5セット繰り返し集計値を併合して精度を上げる由。なお、複数回ランダム・ドローした値の個人別平均値を使うのは誤り。
 なあんだ、こないだ調べた潜在クラスモデルにおけるpseudo-class drawとそっくりな話ではないか。もっとエキゾチックな話題かと思ってた、意外なり。

 いまやってる市場調査関連の仕事に当てはめて考えると、たとえばwebでのサーベイ調査で、ある事柄への態度をあれやこれや調べて集団レベルで比較したい、ほんとは100項目くらい調べて因子分析でもしたいんだけど、回答負荷の観点から泣く泣く項目を減らしましょう、などという場合がある。別に個々人に全部答えてもらう必要はないじゃん、PISAみたいに項目をブロックにわけてブックレットをつくってもいいし、なんならランダムに項目を出したっていいじゃん... と思うのだが、これがなかなか受け入れてもらえない。まあ、全国学力テストでさえ全員に同じ項目を与えてしまうお国柄だから、しょうがないかなと思っていたのだが、ひょっとしたら、全項目を聴取しなくても個々人の因子得点推定が可能ですと説得するより、個々人は無理だがPVってのがありますよと説明したほうが、ピンときたりするかしらん? うーむ、そんなわけないか。この論文とは全然関係ない話だな。

論文:データ解析(-2014) - 読了: von Davier, Gonzalez, & Mislevy (2009) Plausible values とはなんぞや

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