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2012年4月12日 (木)

Dillon, W.R., Frederick, D.G., Tangpanichdee, V. (1985) Decision issues in building perceptual product spaces with multi-attribute rating data. Journal of Consumer Research, 12(1), 47-63.
 消費者調査の分野でよく登場する,製品ないしブランドの知覚マップのつくりかたについての解説。製品の多属性評価データに基づくマッピングを前提に,データ入力,データの相(mode),事前処理,選好のモデル化,技法,解,の6つの段階に分けて,問題と注意点を列挙している。
 仕事の足しになるかと思って読んだ。なにぶんにも20年近く前の論文なので,いささかout of dateなところもあるのだが,こういうレビューは頭の整理になるような気がする。
 列挙されている注意点をメモしておくと:

 製品開発やブランドに関わるサーヴェイ調査データは,ヒト x モノ(製品ないしブランド) x コト(属性)の3相データになることが多い。測定値は立方体の形に並ぶわけだ。仕事の関係で調査データの分析レポートを目にする機会があると,ついつい「この業者さんは3相データをどう処理しているかな...」とチェックしてしまうんだけど,対象者xモノを行,項目を列にとった縦積みのローデータを因子分析して,因子得点で重回帰して... っていうの,非常に多いですね。Srinivasanらのいうtotal analysis, この論文でいう extended data matrixアプローチである。
 それがまずいという指摘はこの論文に限らず時々見かけるし,仕事のなかで頻繁に議論になる問題である(月に一回くらいの頻度でこの話を誰かに説明しているような気がする)。以前,説明の際のネタにしようと思い,このアプローチを採用している(いわば悪役の)実証研究を探してみたことがあるのだが,うまくみつけられなかった。この論文では,Hauser & Koppelman (1979, JMR), Huber & Holbrook(1979, JMR)が挙げられているけど,うーん,もっと新しいのはないかしらん。

 ところで... 以前,社内研修で3相データの扱いについて話す際,この立方体になんかステキな愛称がつけらんないもんかしらんと首を捻ったことがあったのだが(そういうくだらないことばかり考えているからいけないのかもしれない),この論文によれば,なんと! すでに50年代に,R. CattellがこれをBDRM(Basic Data Reduction Matrix) と呼んでいるのだそうだ。し・ら・な・か・っ・た! 70年前後にCattellが多相データについて論じる際,"Data Box"という言い回しを使っているのは見かけていたのだが。。。
 Cattellは知能研究の話には必ず出てくるビッグ・ネームで,私も心理学の講義をやっていた時分には,あたかもその研究について知悉しているかのように紹介していたものだが,恥ずかしながら通り一遍の知識しかなく,院生のころに聞いた先輩の「キャッテル先生,ペット飼ってますか?」「うんキャッテル」という冗談だけが妙に印象に残っている。ごめんなさいごめんなさい。
 それにしても,Cattellの名前にこんなに動揺したのが,我ながら可笑しい。仕事がらみの資料をフガフガと気楽に読んでいて,いきなり心理学者の名前が出てくると,ある町を散歩していたら不意に別の町に着いたような気がするのである。

論文:マーケティング - 読了:Dillon et al. (1985) 製品マップのつくりかた

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