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2012年6月12日 (火)
Curran, P.J., Bauer, D.J. (2007) Building path diagrams for multilevel models. Psychological Methods, 12(3), 283-297.
ここんとこちょっとバタバタしていたもので,気分転換に,積んである資料の山のなかからなるべくどうでもよさそうな奴を選んで手に取った。
マルチレベル・モデル(multilevel model)をパス図で描く方法を提案する論文。いったいどうやって描けばいいんだろうかと,前から気になっていたのである。Muthenさんたちは,ランダム係数をパスの上の黒丸で描いたり,階層ごとにパス図を書いて点線で区切ったりしているけど,ああいうの,他の人が描いているのをみたことがないような気がする。
このような,いっちゃなんだがどうでもいいような話についても,さすがに著者らはちゃあんとレビューしていて,
- Bauer(2003), Curran(2003), Mehta&Neale(2005): ふつうSEMの描き方で無理矢理描いている。でも直観的にわかりにくい。たとえば,ランダム効果は因子負荷が『定義』変数と呼ばれる観察変数によって定義されているような潜在変数としてあらわされている。他の観察変数は箱であらわされてるし,他の潜在変数はランダム効果でない。(←おまえはいったい何をいっているんだ、と思ったが、Mehta&Neale(2005)の図を見たら著者の言っている意味がわかった。図を言葉で言い表すのはムズカシイ...)
- McArdle&Hamagami(1996): 多群SEMの描き方で描いている。ファントム潜在変数を使わないといけないので,やっぱりわかりにくい。
- McDonalds(1994), Muthen&Muthen(2003), Muthen&Satorra(1989), Skrondal&Rabe-Hesketh(2005): 独自システムを提案。しかし,一番典型的なマルチレベルモデル(ランダム係数で潜在変数がない)を描くのにあまり使われていない。そういうモデルのためには大げさだし,方程式をそのまま図に翻訳していないからであろう。
というわけで、著者の提案は以下の通り。基本的にSEMのパス図の描き方と同じなのだが、次の点が違う:
- 円は潜在変数じゃなくてランダム係数をあらわす。円は必ず片矢印の上に重ねて描く。
- 三角形の内側に 1 と書いて切片をあらわす。この1に添え字がついていたらレベルをあらわす。たとえば,1に添え字2がついていたらレベル2の切片。
- 箱の内側の変数名が,ふつうのフォントだったら中心化なし,太字だったら群平均中心化,イタリックだったら全平均中心化。
図の例をみてみると、円が潜在変数ではないというのは意外に違和感がないが(円は必ず線に重なっているので、見まちがえる心配はない)、結局レベルを添え字で表しているところがわかりにくい...方程式との整合性を重んじると、こうなるのは仕方ないんだろうけど。
事例がいくつか紹介されていたんだけど、睡眠不足のせいもあり、数行ごとに意識が遠のくような感じで、結局全部流し読み。まあ、しょうがないや。次に行こう。
論文:データ解析(-2014) - 読了:Curran&Bauer(2007) マルチレベル・モデルをパス図で描く方法