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2013年6月12日 (水)

松井剛 (2004) 消費社会批判の4類型. 一橋大学研究年報: 商学研究. 45, 171-196.
 計算の待ち時間に読んだ紀要論文。「本読みました」という感じのレビューだけど、勉強になりました。
 えーっと、著者によれば、消費社会批判には大きく4つある。

  1. 文化の画一化とアメリカナイゼーションへの批判。アドルノとか、マルクーゼとか(フランクフルト学派っていうんですかね)、フロムの「破壊」に出てくる「マーケティング的性格」とか。
  2. 企業による消費者欲求の操作に対する批判。パッカードのモチベーション・リサーチ批判とか、ガルブレイスの「ゆたかな社会」とか。この種の批判に対する反論としては、「そんなにうまく操作できてないからいいじゃんか」説と(は・は・は。メディア強力効果説にニュースキャスターが反論するようなもんですね)、「操作じゃないよ教えたげたんだよ」説がある。
  3. 欲求が社会システムによって構造的に規定されている、という批判。Offe (1984) "Contradictions of the Welfare State"という本が挙げられている(クラウス・オッフェ、ハーバーマスの弟子らしい)。それから、「マクドナルド化」とか、ボードリヤールとか。これに対して著者の方は「自らの行為を規定する社会システムからの圧力を知りつつも、その行為を選び取るという主体性がないとは言い切れないだろう[...] むしろ考えるべきなのは、主体的な行為が社会構造を再生産し改変するという逆方向のプロセスだろう」と述べているけれど、うーん、これがリッツァやボードリヤールへの批判として成立しているのかどうかよくわからない。まあとにかく、私はシステムと主体のインタラクションを見たいんだ、という、著者の方の気持ちのあらわれなんでしょうね。其の言や善し。
  4. 最後に、ヴェブレンとかジュリエット・ショアのような、競争的な浪費への批判。著者いわく「消費者間相互作用に着目するがゆえに、企業やメディアといった消費社会を構成する様々なプレイヤーの利害関係がどのようなものであり、それがどのような問題を生みだすのかという視点に欠けている」とのこと。なるほど、それはそうかも、と納得。とはいえ、それは大河小説を書くような、とても難しい作業になるんでしょうけど...

 よく教科書などに「かつてモチベーション・リサーチというのがあったけど大昔にすたれました」って書いてあるけど、すたれたってのはホントなのかなあ、という疑問があって、なんとなくwebを検索していたときに見つけた論文であった(と、読み終える間際に思い出した)。Barbara Sternという人が、広告会社ではずっと現役だったと指摘しているらしい。やっぱそうですよね。読んでみようかな、と題名をみたら、文学理論からみたマーケティング、なあんて書いてある... 死ぬほどめんどくさそうだ...

論文:マーケティング - 読了: 松井 (2004) 消費社会批判の4つのタイプ

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