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2013年6月12日 (水)
Stern, B. (2004) The importance of being Ernest: Commemorating Dichter's contribution to advertising research. Journal of Advertising Research, 165-169.
いくら待っても計算が終わらないので、山積みの資料のなかから適当に選んでもう一本読んだ論文。(なにが起きているか薄々気づいているんですが。Muthen先生はかつてこういっていた。モデルの推定が収束しない最大の理由、それはモデルの誤りである、と...)
広告研究の専門誌に載った、アーネスト・ディヒターの業績を振り返る文章。いわく、アカデミズムにおいてディヒターが急速に忘れられたというのは本当で、消費者行動論の教科書を15冊調べたが名前が載っていたのは3冊。200年に出た"The Why of Consumption"という論文集で彼の名前が出てくるのは最初と最後の頁だけ。でもモチベーション・リサーチは広告の実務家たちに受け継がれ、マーケティング業界の「コード」となっている。名前は忘れられていても、「モチベーションの源としての無意識について論じるとき、そこにはいつもディヒターがいる」。。。という、いささか格好良い文章であった。
どうでもいいけど、面白かった話:
- ディヒターは1938年にナチスから逃れてニューヨークに移り、師匠のラザースフェルドの奥さんが働いていたMarket Analystsという会社に勤めるだけど、そこにはHans Zeiselもいた、とのこと... ひょっとして、名著「数字は語る」のハンス・ザイゼルではなかろうか。
- ディヒターを知る人いわく、彼には実はコピーライターの才能があった。石鹸についての消費者インタビューを請け負っていて、入浴と宗教儀式としての水浴との類似性に思い至り、"Wash your troubles away"という文句をひねり出す。P&Gの担当者いわく"You s.o.b., you are really a copy writer"。ははは。
いま気が付いたけど、この論文の著者こそ、さっき読んだ論文に出てきたBarbara Sternではないか... 調べてみたら、マーケティングの有名な研究者で、数年前に亡くなっている。
論文:マーケティング - 読了: Stern (2004) アーネスト・ディヒターへの頌歌