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2013年6月19日 (水)

Parkin, K. (2004) The sex of food and Ernest Dichter: The illusion of inevitability. Advertizing and Society Review. 5(2).
 モチベーション・リサーチの祖アーネスト・ディヒターについて調べていてみつけた論文。掲載誌がどういう性質のものなのかよくわからない。電子ジャーナルだが、オープンではなさそう。

 50年代アメリカ、かのフロイトの威光を着て、ディヒターは広告界に強い影響力を持っていた。彼は消費者にとって食品には性別があると主張した(ケーキは女性でステーキは男性)。1955年、ある企業への報告書で、ディヒターはこんなことを書いているそうだ。

ある有名な外科医によって行われた実験で、食べ物が性を持っていることが発見された。その優れた医師は、食道検査のためにバリウムを飲ませる際、女性の患者に「サラダ」という言葉を聞かせると、食道が拡張し、バリウムが通過しやすくなることを見いだした。男性の患者に「ステーキ」という言葉を聞かせても、同様の反応がみられた。しかしこれを逆にすると、男性でも女性でも食道は変化しなかった。食品の広告主は、もっとも効果的な訴求を行うために消費者の性別を考慮しなければならない。

 ほんまかいなと思うけど、とにかくこのようにディヒターは、食品には必然的に性的イメージが伴うと主張し続けた。実証性がないという批判を浴びても。モチベーション・リサーチは62年の段階ですでに滅びたと評されていたそうだが(意外に早い)、それでもディヒターはこういうリサーチで大儲けを続けた。

 著者いわく、現代に至るまで状況はかわらない。食品の広告は性的なイメージに満ちている。広告代理店は「サイコグラフィクスは時代遅れだ」とかいいながら、モチベーション・リサーチの調査手法を使い続けている...と、ここでGrey WorldwideのEmotional Trigger Pointsという手法と、Young & Rubicam の BrandAsset Valuator の名前が挙がっている。前者はWPP傘下の広告会社だが、ETPというのは探してもみあたらない。BrandAsset Valuatorはバリバリの現役ですね。
 というわけで、批判というよりは広告史探訪という感じの文章であった。

論文:マーケティング - 読了: Parkin (2004) セックスと食べ物とアーネスト・ディヒター

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