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2014年1月 5日 (日)

Bookcover 「紙上の教会」と日本近代――無教会キリスト教の歴史社会学 [a]
赤江 達也 / 岩波書店 / 2013-06-27
序章からなんだか肩に力が入っている感じで、ひょっとして若い研究者の博士論文かな、と思ったら、まさにその通りであった。ともあれ、面白い本であった。
 内村鑑三以降の無教会キリスト教の歴史を、特に雑誌メディアとの関わり(著者のいう「紙上の教会」)に注目して辿る。前半は内村、後半は矢内原忠雄らが中心人物となる。
 本の主旨もさることながら、とても面白かったのは、内村の不敬事件のくだり。教育勅語への敬礼を雄々しくも敢然と拒否したのだとばかり思っていたのだが、実際にはそういう話ではなくて、そもそももっと堅い信念を持つキリスト教徒の教員は仮病で休んでいたし、内村鑑三は迷った末ちょっと頭を下げてみせ、その頭の下げ方が十分でないという指弾を受けたのである。
 なるほど、とかえって感銘を受けた。このように、誠実であるが故に中途半端な姿、そして事件を乗り越えて自分の道を進んでいく姿にこそ、学ぶべきものが多いように思う。

日本近現代史 - 読了:「『紙上の教会』と日本近代-無教会キリスト教の歴史社会学」

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