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2014年3月 4日 (火)
Schwarz, N. (2007) Cognitive Aspects of Survey Methodology. Applied Cognitive Psychology, 21, 277-287.
80年代初頭に米の調査法研究者らのあいだで提唱されたCASM(Cognitive Aspects of Survey Methods)アプローチについての概観。App. Cog. Psy. のこの号はCASM特集号で、これはよく巻頭に載っているような、以降の論文の露払いなんだけど、CASMも提唱されてから随分と月日が経っているから、その蓄積が紹介されていてなかなか面白い。それに短いし。というわけで、既読(のはず)だが、仕事の都合で再読。
いくつかメモ:
- 調査への回答に伴って生じる心理プロセスの研究は、CASMのような対象者に注目する流れと、インタビュアーとの相互作用に注目する流れがある。後者は後者で長い歴史を持っていて(Lindzey & Aronson (Eds) "The handbook of social psychology"の章がreferされている。なんと1968年)、エスノグラフィーと談話分析に継承された由。あー、そういう見方ができるか。2つの流れの融合については、この特集号のOngena & Dijkstra (2007) をみよとのことだが、題名から見て会話公準の認知モデルらしい。
- 対面調査で、対象者がことばの意味がわかんなかったら調査員がさらに詳しく説明する、なんて手続きをとることがあって、そういうclarificationをオンライン調査で提供するという試みもあるそうなのだが、いっぽう対象者なり調査員なりがいつ「ああ{私には/この人には}clarificationが必要だ」と思うか、という問題については研究がない由。なるほどねー。調査参加経験についてのメタ認知の問題だ。面白いなあ。
- 最後の総括で、CASMのおかげで認知心理学と調査方法論のあいだに橋はかかったけど、その橋を渡るのは心理学者ばかりで、調査方法論研究者が認知心理学に貢献することは少ない... という話の中にいきなり、まあ認知心理学では認知過程の普遍性が仮定されているから代表サンプルは贅沢だと思われるんだよね、というコメントが出てくる。その観察が当たっているかどうかは別にして、なぜここで標本の代表性の話が顔を出すのかがわからない。市場調査を見よ、調査方法論のヘビーユーザではあるが、みんな代表性のことはろくに気にしていないぞ。おそらく、ここで調査方法論と云われているのは一義的には公的調査のことなのだろう。そりゃ、ま、そうか。
論文:調査方法論 - 読了: Schwarz (2007) CASMの四半世紀