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2014年4月 4日 (金)

Cayla, J., & Eckhardt, G.M. (2008) Asian brand and the shaping of a transnational imagined community. Journal of Consumer Research. 25. 216-230.
 先日読んだアンダーソン「想像の共同体」がむやみやたらに面白くて、私のなかでブームを巻き起こしてしまい、そのあおりで読んだもの。なにやってんだか。
 アンダーソンいわく、近代国民国家という想像された共同体の成立は、「我が国の言語」による出版資本主義の発達を基盤として可能になった。同様に、国レベルのブランドではなく地域レベルのブランド、たとえば「アジアのブランド」が基盤となって、異なる国の人々のあいだに共通の想像された共同体(「私たちアジア人」)が形成されている。というような主旨の論文。面白いことを考えるものだ。

 シンガポール、上海、シドニー、香港、ハイデラバード、クアラルンプールで働く、マーケティング・マネージャーやプランニング・ディレクターなど、23人にインタビュー。アジア各国で展開しているリージョナル・ブランドの構築に関して取材する。とくに、タイガー・ビールとZujiという旅行ポータルサイトに焦点を当てる。知らなかったんだけど、タイガー・ビールってシンガポールのブランドなのだそうだ。
 で、地域ブランド構築のプロセスを、3つの軸に沿って記述する。
 (1)文化的近接性の構築。それぞれの国の歴史を切り離し、アジア共通の未来のイメージを構築する、というような話。
 (2)ブランドからの場所性の剥奪。どこの国ともしれない、都市的なアジアのイメージを構築する。
 (3)アジア文化のモザイクの創造。たとえば、Zujiというブランド名は北京語でfootprintという意味なんだけど、多くの国ではその音の響きからして日本語だと思われている由。ロゴはモダンな感じにして、色使いはタイっぽくて、タレントはチョウ・ユンファで、タグラインは"Your Travel Guru", これはインドっぽい由。
 
 正直、途中から適当に読み飛ばした。すいません。こういう事例記述って、どう読めばいいのかだんだんわかんなくなってしまうのである。

 本筋とは関係ないけど、Panalozaという人がこんなことをいっているのだそうだ。「消費者研究者たちは、消費者行動研究をマーケティング活動の研究から切り離されたものにしようとするあまり、市場において消費者とマーケターが相互の関係のなかで文化的意味について駆け引きする(negotiate cultural meanings)ありかたが見えなくなっているのではないか」。
 そうそう、これは数年前に講義の準備で消費者行動論の教科書を並べてめくったときに感じたことであった。なんであれディシプリンの成立は抽象化を伴うわけで、抽象化自体を批判するのは筋違いだと思うけど、マーケターの役割をいったん脇において消費者の認知・行動モデルをつくるということについて、消費者行動の研究者の人たちは日頃どう思っているのだろうか、という疑問があった(少なくとも日本では、心理学の観点から消費者行動に関心を持つ人より、マーケティングの観点から関心を持つ人のほうがずっと多いようだから)。やっぱりこういうことをいう人もいるのね。もっとも、この人がどういう人なのかはわからないけれど。

論文:マーケティング - 読了:Cayla & Eckhardt (2008) ブランドによる「想像のアジア共同体」の構築

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