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2014年4月 8日 (火)

Wertenbrock, K. & Skiera, B. (2002) Measuring consumers' willingness to pay at the point of purchase. J. Marketing Research, 39 (2), 228-241.
incentive-aligned mechanismについて調べていて目を通した論文。Ding(2007, JMR)で引用されていた。著者のSkieraって、予測市場の研究をしている人ではないか。こんなところでつながっているのか。

 購入時点において支払意思金額(WTP)を聴取するいくつかの方法、特にBecker-DeGroot-Marschakの方法(BDM法)とそれ以外の方法を比較しました、という論文。

 まず、WTPを調べる方法についてレビュー。

 実験1と2。

 どちらも、100人を統制群(直接聴取)、100人を実験群(BDM法)に割り振る。実験者が寄ってって声を掛ける:「こんにちは!キール大のリサーチャーです。マーケティングの調査をやってます」。断る人はほとんどいなかったそうだ。課題をやって、最後に質問紙。なお、調査参加報酬については記載がみあたらない。なにも渡さなかったようだ。
 課題は以下の通り。

 実験群のほう、参加者の支配戦略は真のWTPを提案価格にすることである。
 リアリティを追求するので、架空貨幣をつかうとかあらかじめ報酬として金を渡すとか、そういう生易しい話ではなく、ほんとに被験者の財布から金を出させて売りつけるのである。日本でやったら役所に叱られちゃいそうな実験だ。

 結果。WTPの平均はBDMのほうが低い。そのほか「信頼性」「表面的妥当性」「内的妥当性」「基準関連妥当性」の4つに分けて、いろいろ分析してBDMが優れていると主張しているんだけど、いまいち決め手に欠ける感じ。たぶん一番強く推している証拠は、内的妥当性と称されている箇所であろう。それぞれの条件で、横軸にWTP、縦軸に人数をとった累積分布を描く。で、買値で購入確率を予測するロジットモデルを組んで、得られる予測曲線をあてはめると、BDMのほうがフィットしていた由。うーん、それって要するに、WTPの累積分布がBDMのほうでなめらかだった、ということの言い換えのような気がするんだけど。

 想定される批判にお答えして、実験3につなぐ。

 というわけで、実験3。こんどは実験室。被験者は学生255名、商品はボールペン。課題のあとで質問紙。課題は以下の3条件。

 結果。実験1-2と同じく、BDMだとWTPが低めになった。

 云々。

 考察。BDMは優れた方法である。直接聴取のような主観選好法はWTPの過大評価を招く。
 今後の課題。BDMはコンセプト評価には使いにくいし、高価な商品は難しいかも。こうした限界を克服する工夫が必要。とかなんとか。

 要するに、WTPを調べるのにBecker-DeGroot-Marschakの方法が優れている、という主旨の論文である。ふうん、そうですか。
 論文の主旨とはちがうけど、むしろ、あるWTP測定の信頼性・妥当性を示すのがいかに難しいかという点を痛感した。この論文では、たとえばデータを調査の日付で分割し、日付間での変動がBDMのほうで小さい、だから信頼性が高い、なあんてことをやっている(別に日付がノイズになると考えるだけの理由があるわけではないのに)。く、苦しい...それって信頼性の検証の方法としてはどうなの? でも、ほかにいい方法も思いつかない...。
 妥当性のほうも、質問紙の回答からWTPを予測するモデルをつくったら、BDMのほうが係数が有意になった、とかなんとか(もともとWTPの生成について明確なモデルを持っているわけではないのに)。く、苦しい...。でも、ほかにいい方法も思いつかない...。

論文:予測市場 - 読了:Wertenbrock & Skiera (2002) 消費者の支払意思額をくじ引きを使って測定する

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