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2014年5月 8日 (木)
崔仁淑(2014) タブーであるテーマを巡る日本人の世論 -新しい実験調査手法による世論の構造的解明-. 行動計量学, 41(1), 47-62.
要するにネット調査で一種の説得実験をやったというような研究だと思うんだけど、本筋じゃなくて先行研究概観のところをメモしておく(すいません、単に私の関心の問題です)。
- 世論(public opinion)の研究においては、多くの人は政治問題についてあまり知識がなく明確な自分の意見を持ってない、という立場が70年代まで主流であった。ラザーズフェルドらが挙げられる。彼らを(大衆の信念をminimalに捉えているという意味で)ミニマリストという。これに対しSnidermanらは、調査の文脈を実生活に近づけ討論させればそれなりに合理性を持って判断する、と主張した。彼らをアンチ・ミニマリストという由。へぇー、そんな言い回しがあるのか。ミニマリズムはメディア強力効果説とどういう関係にあるのかしらん。
- この研究では、原発への賛否(事前の態度)と、それぞれに対して提示する反論文のタイプを要因にして事後の態度を調べているんだけど(その意味では超古典的な態度変容実験だと思う)、世論調査でこういう「反論テクニック」を使うという試みが既にある由。へぇー。これもSnidermanという人。最近流行りの討論型世論調査(DP)とはどういう関係にあるのだろうか。
- こういう風に「アンケート調査にインターアクションをはじめて導入したのはHyman(1954)である」とのこと。Herbert Hyman "Interviewing in social research"という本だそうな。へぇー。
というわけで、「インタラクションを利用したサーヴェイ調査」というのがそんなに新しい発想じゃないらしいという点が勉強になった。
消費者調査の文脈で、定量調査にちょっとインタラクティブな要素を持ち込もうとすると、いきなり定性的インタビューとのアナロジーで受け取られてしまい、いやそこまで飛躍するつもりはないのよ、単に特定の性質の認知過程を引き起こそうとしているだけで、その限りにおいてはstaticな質問紙となんら変わりがないのよ... という違和感を感じていた。ぼやいていないで、ちゃんと調べてみるべきだな。きっと先達はいる。
著者は無闇に控えめな方で、締めのくだりで「本論文はポスト・ドクターという制限のある地位において実施した調査データから分析、結論付けたものである。それゆえ[...]確実な証明になっていないことを十分に認識している」なあんて書いておられる。いやそんなことを書いてくださらなくても、とちょっと可笑しかった。
論文:調査方法論 - 読了: 崔(2014) 世論調査の途中で調査対象者に反論してみる