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2014年7月25日 (金)
少し前に読みかけて忘れていた奴。整理がつかないので、残りにざざっと目を通した。
Baldinger, A.L., Cook, W.A. (2006) Ad Testing. in Grover, R., Vriens, M. (eds.) "The Handbook of Marketing Research", Chapter 23.
いわゆる広告テストについての概説。仕事の関連で、ちょっと頭を整理したくて読んだもの。第一著者の肩書はコンサルタント。第二著者はARFのえらい人らしい。
内容は...
- モデル。広告に関する財の特性のモデルとして、横軸に関与、縦軸に思考/感情をとったグリッドが有名(FCBグリッドというんだそうな。へー)。メディアのモデルとして、ARFの8段階モデル。個別の広告効果測定のモデルはいろいろあるが、プロプライエンタリなので比較が難しい。効果測定の妥当性研究については Adams & Blair(1992, JAR) というのが挙げられている。
- 広告調査の諸段階。コミュニケーション戦略開発、プリテスト、ポストテストに分けて、目的と一般的な方法を紹介。プリテストにおいてはノーム(データベースから得た基準)が大事だ、とのこと。そうねぇ、そりゃそういう話になるよねぇ...。ま、この辺は立場によって意見が分かれるかもしれない。
- キー指標:
- 注意。
- ブランド名や訴求点の再生。広告とブランド名の結びつきが効果を生むという点については業界の合意があるが、訴求点の再生が大事かどうかははっきりしない。
- 説得。再生が大事か説得が大事かという点については長きにわたる哲学的論争がある(←言いっぱなしじゃなくてなにか引用してよ...)。測定の代表的手法としては、(1)pre/postでブランドリストをみせて選ばせる。Schwern法というそうな。(2)pre/postで購入意向。(3)pre/postで恒常和法。
- 感情的反応。生理指標(GSR, 心拍, EEG, fMRI, EMG), マウスかなんか握らせてクリエイティブ見ながら動かせっていう奴、顔を選ばせる奴。
- 診断指標・内容分析。
- 売上に対する効果。代表的手法はin-market split cableで、IRI傘下のBehaviorscanが有名。もっとも競合にばれちゃうのであんまし使われてない由。
- 役割と責任。
- メディア種別ごとの技法。TV, ラジオ、プリント、新聞、ビルボード、オンライン。
- 将来。インターネット、消費者の広告回避、統合的リサーチ。
どうでもいいけど、主要な広告調査会社として脚注で挙げられていたのは以下の会社であった:
- Ameritest
- Bruzzone Research (Donald Bruzzoneという人がやっていた会社で、Bruzzone Testと呼ばれる再認テストに名を残しているらしい。亡くなったようで、会社も現存しない模様)
- Communicus
- Diagnostic Research (現在はAdded Valueという社名で、WPP-Kantor傘下らしい)
- Gallup and Robinson
- GfK Custom Research
- Ipsos-ASI
- Mapes and Ross (Roy Morgan Researchという豪の会社に買われた模様)
- McCollum Spielman Worldwide (現在はMSW ARS Researchというらしい)
- Millward Brown (WPP-Kantor傘下ですね)
- PreTesting Company (すごい分かりやすい社名だなあ)
- Research Systems Corporation (ARS Persuasion という有名なシステムを持っていたらしい。推測するに、その後ARS Groupという社名になり、さらにネット視聴率の comScore に買収されたのではないかと思う)
- Taylor Nelson Sofres (現在のTNS, これもWPP-Kantor傘下)
2006年刊の本に挙げられているリストでこれなんだから... 諸行無常って感じですね。
論文:マーケティング - 読了:Baldinger & Cook (2006) 広告テスト概説