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2014年8月17日 (日)

知らず知らず、世間の夏休みムードに感染しているようで、ここんところフィクションが多めである。

Bookcover 黒い裾 (講談社文芸文庫) [a]
幸田 文 / 講談社 / 2007-12-10
幸田文は父・幸田露伴を巡るエッセイの書き手として出発し、51歳にして小説「流れる」を発表するんだけど、これはその前に出していた短篇集。エッセイから小説へと徐々に移行している段階だったのだろう。
 表題作の短編「黒い裾」が抜群に面白いと思った。喪服小説というか、葬式小説というか... ある女の一生を、葬式の経験だけをつなぎ合わせるようにして描いた作品である。

Bookcover シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫) [a]
W. シェイクスピア / 筑摩書房 / 1996-04
数年前に小田島訳で読んでいたのを、このたび松岡訳で再読。
 不思議なもので、読み直すと印象が変わってくるものだ。この先生の訳の特徴のせいか(いったん下品になるととことん下品になる)、小田島訳に比べて猥雑さが増し、マキューシオがより粗雑で頭の悪い青年になった、ような気がする。
 この芝居で特に面白いなあと思うのは、ジュリエットが生涯最期の数日間で急速に成長していくところなのだけれど、でもつくづく思うに、ひたむきさと分別とは別の問題なのである。
 そんなこんなで、やっぱりこの作品は非常に面白い。あれこれ考え始めると興趣が尽きない。よい本の徳である。

Bookcover スミヤキストQの冒険 (講談社文芸文庫) [a]
倉橋 由美子 / 講談社 / 1988-01-27

Bookcover 二十一の短編 ハヤカワepi文庫 [a]
グレアム・グリーン / 早川書房 / 2005-06-09
再読。

Bookcover ぼくを忘れたスパイ〈上〉 (新潮文庫) [a]
キース トムスン / 新潮社 / 2010-09-29
Bookcover ぼくを忘れたスパイ〈下〉 (新潮文庫) [a]
キース トムスン / 新潮社 / 2010-09-29
最近ボケはじめた父親が、実は往年のスパイにして国家機密の持ち主。漏洩を心配した邪悪な政府機関に親子共々命を狙われるが、たまに正気を取り戻すと父は「ボーン・アイデンティティ」なみのアクションヒーローと化し、敵をばったばったとなぎ倒す...というお気楽極楽なB級アクション・スリラー。ついつい読んじゃいました。

フィクション - 読了:「ロミオとジュリエット」「黒い裾」「ぼくを忘れたスパイ」「二十一の短編」「スミヤキストQの冒険」

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