elsur.jpn.org >

« 読了:Gilbert & Meijer (2005) 時系列因子分析TSFA | メイン | 読了:Commandeur, Koopman, & Ooms (2011) 状態空間モデルのためのソフトウェア »

2014年9月19日 (金)

Bookcover Rによる時系列分析入門 [a]
田中 孝文 / シーエーピー出版 / 2008-06

 数学が得意な人には苦手な人の気持ちがわからないし、苦手な人はふつう年を食ってから改めて勉強したりはしないので、結局わたしの気持ちなんで誰にもわかってもらえないのである。(ぼやき)
 というわけで、データ解析の諸領域のなかでも鳥肌立っちゃうくらいに苦手な、時系列分析の勉強のために通読した本。論文を読んでいるといつもわけがわかんなくなり、バカ高い参考書を何冊も買っては投げ出し、レベルを落としに落とし、ついにここにたどり着きました。もとは青山学院大の学部の計量経済学の演習資料だそうである。文系の学生諸君よ、ありがとう!
 
 ええと、内容は...
 最初の1/3は、経済時系列・超入門、という感じ。

 中盤(9章-14章)は時系列とはほぼ無関係に、確率統計入門。確率と確率分布、確率変数の特性、正規分布、母集団と標本、積率法と最尤法、標本分布(ここでカイ二乗分布を導入)、推定量の不偏性・一致性・有効性、区間推定(ここでt分布を導入)、仮説検定(t検定とF検定)、単回帰とそのパラメータ推定量、予測値の区間推定、重回帰とそのパラメータ推定量、2次元の同時確率分布(ここでようやく共分散と相関を導入)、条件付き分布と独立性、多変量正規分布(ついでにcontour()を紹介)。通年の講義の1/3で、これだけホントにやるのだろうか。大変だなあ。

 終盤、ついに時系列分析っぽくなってまいりまして... ここからは真面目に読んだ。我ながら涙ぐましい。

 というわけで、詳しい人は「肝心なところを端折りおって...」と苛立つかもしれないが、私のような宿命的な数学音痴にはぴったりの教科書であった。特に15章から19章、説明の順序がわかりやすいおかげで、はじめて腑に落ちる箇所が多かった。要所要所でシミュレーションコードを示してくれているのも嬉しい。実行してはいないけど、目で追うだけでなんとなくわかったような気がして、助かる。

 それにしてもこういう話、少なくとも私にとっては、会社勤めしてはじめて面白みを感じるようになった話題だ。学生の身の上にしてちゃんと勉強できる人って、いったいどういう動機づけを持っているんだろうか。(形を変えたぼやき)

データ解析 - 読了: 「Rによる時系列分析入門」

rebuilt: 2020年11月16日 22:57
validate this page