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2014年11月26日 (水)

川口俊明(2011) 教育学における混合研究法の可能性. 教育学研究, 78(4), 386-397.
 ちょっと関心を惹かれて目を通したもの。

 量的調査と質的調査を統合するアプローチは、昔はマルチメソッドなどといわれたが、最近は混合研究法(mixed research)という用語が定着している。2003年に最初のハンドブックが出ている(Tashakkori&TeddlieのSAGE Handbook。2010年に第二版が出ている)。日本の教育学では中村高康という方が有名(東大比教社)。その他、実践例として吉川徹「学歴社会のローカル・トラック」や本田由紀「家庭教育の隘路」なども挙げられている。そうか、いわれてみれば。。。
 なにを混合研究法と呼ぶのか、意見は一致していない。Morse & Neihaus (2009)という本では、中心的手法と補助的手法が組み合わされていればよくて、たとえば参与観察のあとでインタビューをやってもやっぱり混合研究なのだそうだ。
 そもそも定量と定性ではものの見方が違う、というのは誰でも思いつく見方だが(こういうことを方法論サイドから規範的に主張する人が多くてちょっとうんざりしている。あれは一種の既得権益擁護だと思いますよ)、実際Creswell & Clark (訳書出てるやつ)は、研究が依拠するパラダイムを{ポスト実証主義,構築主義,参加型,プラグマティズム}に整理し、混合研究法はプラグマティズムと親和的だと述べている。いっぽう、思想に関わらず定性と定量の区別そのものが馬鹿馬鹿しいという人もいる(Gorardという人、SAGE Handbook所収。読んでみたいなあ)。

 で、ここからが面白かったんだけど... 混合研究法の分野では自分の研究デザインを記号で表記するんだそうだ。たとえば「学歴社会のローカル・トラック」は、最初に高校生の質問紙をやって次にインタビューやっているので「QUAN→qual」と書く(メインが定量、次に補助的に定性をやっているから)。「家庭教育の隘路」はどっちが本命ともどっちが先とも云い難いので「QUAL+QUAN」。ははは。馬鹿馬鹿しいようにみえるけど、こういう明示化はきっと大事なんでしょうね。
 著者曰く、本田の研究は量的研究と質的研究が結論の段階まで統合されていない、すなわち混合研究法としてはそれほどよい調査デザインではない、とのこと。ご本人が混合研究法「を」やりたかったのかどうかは、また別の話だと思うけれど。
 後半は著者の研究の紹介。

論文:調査方法論 - 読了:川口 (2011) mixed research in 日本の教育学

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