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2015年1月27日 (火)
水山元(2014) 予測市場とその周辺. 人工知能, 29(1), 34-40.
どうやって手に入れようかしらんと考えていたら、人工知能学会誌「人工知能」の記事にはCiNiiで記事単位で買えるものがあることが判明。正確にいうと、CiNiiでは雑誌「人工知能」について、NDL(国会図書館)のOPACに由来するエントリとNII-ELS(先日クローズした国立情報学研究所の奴)に由来するエントリが二重登録されており、後者のエントリにのみPDF購入へのリンクがついているのだ。細かいことだけど、こういうことがあるので、CiNiiで調べものをするときは要注意である。
恩ある先生だからいうわけじゃないけど、大変勉強になりました。 市場調査の分野で予測市場に関心をお持ちの方も、読まれるとよいと思います。
いくつかメモ:
- Elberse(2007 J.Mktg): マーケティング系の予測市場研究。ざっとめくってみたらHSXのようだ。
- 連続ダブルオークションの限界: (市場参加者数)/(証券種類数)が小さいときに流動性が下がる; 注文数が少ないとき1注文あたりの影響力が大きくなる
- 自動マーケットメーカ方式の代表的方式: HansonのLMSR(対数スコアリングルールを逐次的に適用して値付けする)、Pennockのダイナミック・パリミュチュエル市場(DPM)。いまのところLMSRのほうがスタンダード。
- ふつうのパリミュチュエル方式の難点: (1)途中で売れない、(2)ぎりぎりになって買うのが合理的。
- PennockのDPMの難点: (1)少人数のときに戦略的に撹乱できる, (2)証券を買うときに事後配当が決まっていないのでわかりにくい [←あ、そうか]
- Slamka(2012, JForecasting): Dahanとかの選好市場では実現値が観測できないので美人投票になっちゃいかねないが、それを避ける工夫 [←こ、これはやばい...早急に読むべし]
- Bethos et al.(2009 Lecture Notes in Business Information Processing): アイデア市場の例 [←IDEMって奴。いまざっとみたらGEの奴とかSoukhoroukova et al.とかに近い感じ]
- Chen et al.(2003 InfoSysFrontier), Chen et al.(2004 MgmtSci): スコアリングルールを使って複数人から予測分布を抽出し、それとは別に予測市場を使って個々人のリスク選好を評価し、これらを合わせる。[←ぐぁーややこしそう]
- Kilgour (2004 DecisionAnalysis), Lambert(2008 Conf): 競争的スコアリングルール。複数の人が同時に予測分布を出力するような場面で使う。[←へー]
- Healy (2010 MgmtSci): Subsidized Delphi。デルファイ法の最終ラウンドでスコアリングルールを使う。[←これも読まなきゃ]
- Chen & Pennock (2010, AI Magazine) [← いまざっと見たらBTSに言及がある... なぜ気が付かなかったんだ]
- Shi, et al. (2009, Lecture Notes in Business Information Processing): 企業内予測市場でKPIを低めにしちゃうような好ましくない介入をスコアリングルールで阻止する
- Pennock, et al. (2002 Conf): 「予測市場の価格推移がWebからの知識マイニングためのトリガーとして機能する」[←面白そう]
HansonのLMSRについて全然理解できていなかったことが判明。ちょっとメモをとっておくと...
ある人が出力した分布を表すベクトルを$r$, その$i$番目の要素を$r_i$とする。$r$の逐次的修正$r^{[0]}$→$r^{[1]}$→$r^{[2]}$→...に対してスコアリングルールを適用するのがMSR。特に対数スコアリングルール(実現値 $n$ の下で$r$へのスコアを $b \log (r_n) $とする) を適用するのがLMSR。たとえば $r^{[2]}$→$r^{[3]}$という修正があったとして、実現値が$n$だとわかってからスコア$b \log(r_n^{[3]}) - b \log(r_n^{[2]})$を渡す。これが直接的な実装。
さて、これと等価なマーケット・メーカをつくりたい。出力分布$r$のかわりに、証券$1,\ldots, N$の価格のベクトル$\pi$を考える。市場の状態を発行枚数のベクトル$q$で捉える。たとえば発行枚数が$q^{[2]}$→$q^{[3]}$と変わったとき、価格分布を$\pi^{[2]}$→$\pi^{[3]}$と変えるとして、この変化によって生じる参加者全員の利得[←という理解でいいのだろうか?]が、あとで振り返ると$b \log(\pi_n^{[3]}) - b \log(\pi_n^{[2]})$になっていました、というようなしくみをつくりたいわけだ。
[...生まれながらの文系なので、途中を端折って...] これを満たすのが以下の値付けなのだそうである:
$\pi_n = \{\exp(q_n / b) \} / \{\sum_i^N (\exp(q_i / b)\}$
ええと、各証券の価格を、発行枚数をある単位で数えた値の指数に比例させるわけだ。
...いずれきちんと勉強しなきゃ。Chen & Pennock (2007, Conf)というのを読むとよいらしい。
論文:予測市場 - 読了:水山(2014) 予測市場とその周辺