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2015年1月27日 (火)
今井未来, 水山元 (2014) 予測市場を応用した商品コンセプト評価システムの設計と検証. 人工知能学会全国大会.
資料を探していて偶然見つけたもの。第一著者の方の卒論らしい。
コンジョイント分析風に、製品コンセプトを属性の束として捉え、実験計画でコンセプトを用意して予測市場を走らせる。メカニズムはマーケットメーカ方式 (LMSR)。複数の予測市場を走らせ、それぞれの市場におけるコンセプトの終値の対数を従属変数として属性の部分効用を推定する(市場ごとに推定するのではない模様)。で、各コンセプトには全体効用の指数に比例したシェアを与え、これに比例したペイオフを与える。
シミュレーション。一市場30人。製品の数はよくわからなかった。一回の取引あたりの売買上限は1枚 (空売買あり)、ある時点に誰が取引するかはランダムに決める。プレーヤーは次の3種類で、比率をいろいろ試す:
- 正解モデルに誤差を加えた選好モデルを持っていて、それに従って自己資産の最大化を狙うプレーヤー [←自分の選好と比べて安値な株を買い高値な株を売るってことかな]
- 最高値の証券がシェア100%になると信じて行動する奴 [←ってことは、機会が巡ってくるごとに、最高値じゃない株を叩き売るか最高値の株を提灯買いする、ということかしらん]
- 価格の推移をテクニカル分析している奴 [←嫌な奴だなあ]
結果として、複数市場を走らせたことで市場の精度が高くなった。云々。
勉強になりました。面白いなあ...
要するに、コンジョイント分析での対象者の課題を、自分の選好に基づく評定課題や選択課題ではなく取引課題、つまり(a)他者の選好を推測させる(b)誘因整合的な課題にした、ということだと思う。実験して、普通のコンジョイント分析と比べてみたいものだ。
シミュレーションのレベルでは、選好に消費者間異質性があったときにどうなるか、という点に関心を惹かれる。消費財でコンジョイント分析を使う状況を考えると、いまどきはたいてい階層ベイズ法で個人レベルの部分効用を推定するので、選好に異質性があるときには、それが部分効用の個人差として顕在化するぶん普通のコンジョイント分析のほうが有利かも? いや待て、選好に異質性はあっても、他者の選好の推測には異質性がなかったりして...などなど、夢が広がる。
論文:予測市場 - 読了:今井・水山 (2014) コンジョイント分析の架空製品についての予測市場