elsur.jpn.org >

« 読了:Dickson (1982) ヒトx状況のセグメンテーション | メイン | 読了:Johnson (2003) 回答スタイルを階層回帰でモデル化 »

2015年4月16日 (木)

Greenberg, M., & McDonald, S. S. (1989) Successful needs/benefits segmentation: A user's guide. The Journal of Consumer Marketing, 6(3), 29-36.
 題名の通り、ベネフィット・セグメンテーションについて実務家向けに教訓を垂れる。著者らはコンサル会社National Analystsの人々。この論文の冒頭ページによると、当時はブーズ・アレン・ハミルトン傘下だったらしい。へー。現在はこの論文の第二著者がCEOで、社名はNAXIONというらしい。へー。

 まず概観。
 セグメンテーションのタイプ。ベース変数の種類とその長所・短所の話。略。以下ではカテゴリへのニーズ(ベネフィット)によるセグメンテーションに話を絞ります。
 ベネフィット・セグメンテーションにはperson-basedとoccasion-basedがある[←後者は実はperson-occasion segmentationのことを指している模様。つまり、オケージョンを分類するのではなく、ヒトxオケージョンの組み合わせを分類するセグメンテーション]。ベネフィット・セグメンテーションは頻繁に行われているが、適している場合とそうでない場合がある。たとえば過去ユーザとかスイッチャ―とか購買見込み者に注目している場合には単に購買行動でクロス表をとったほうがよい。云々。
 ベネフィット・セグメンテーションの欠点。調査予算がかかる[←ネット以前の話なので切実だ]。先に定性調査やんなきゃいけないし、時間がかかる。セグメンテーションはステークホルダーが多いので意見調整が大変だし、せっかく作ったのに理解されず書庫にしまわれちゃうこともある[←はっはっはー]。良いセグメンテーションであっても、ターゲットセグメントへのマーケティング活動がうまくなかったら結局は意味がない。
 ここのくだり、ちょっと面白かったのでメモ:

おそらくセグメンテーション・スタディは、それが[組織のなかで]目立つが故に病んでいくのである。セグメンテーション・スタディは組織を先導しようとし、それ故に非現実的な期待を生みだしがちである。セグメンテーション・スタディは[マーケティング戦略の]実行のための詳細なガイダンスをもたらすとは限らないし、創造性の代用品にもなれない。セグメンテーション・スタディの限界を知っている人は、あらゆる意味において、そのプロセスをうまく管理する責任を負う。すなわち、合理的な期待を形成し、セグメンテーションをコンパスではなく地形模型だとみなす人にそれが誤りだと気づかせなければならない。

 後半は、セグメンテーションをめぐる5つの神話を挙げ、それらを否定する。

 マネジリアル・インプリケーション。

 ... 昔の文章ではあるのだが、とても面白かったです。特に後半が。

 その上での、ただの感想なんだけど...
 読んでいて実に実務家らしいなあと思ったのは、(1)セグメンテーションのベース変数としてどういう領域の変数を選ぶかという話と、(2)アプリオリに分類するかアポステリオリに分類するかという話と、(3)クロス表で済むのか多変量解析を用いるかという話とが、ともすればごっちゃに語られてしまっている点。これは過去経験に基づいて教訓を垂れる立場になってみれば極めて自然で、つまりベネフィット・セグメンテーションのような態度の領域の変数によるセグメンテーションは多変量解析を用いたアポステリオリな分類になるのが普通で、デモグラフィクスや購買・消費行動によるセグメンテーションはアプリオリな分類となりクロス表で十分なのが普通である。だからごっちゃになるのは間違ってないです。
 でも、なんだかイライラするんですよね、本質的には違う水準の話を一緒にして語られちゃうと。書き手がどなたであれ、題名が"User's guide"であれ、学術誌の論文であるからには、ただの現象の類型化じゃなくて、世界を捉えるための整理された枠組みを提示してほしいな、なあんて...。 

論文:マーケティング - 読了:Greenberg & McDonald (1989) ベネフィット・セグメンテーション・ユーザーズ・ガイド

rebuilt: 2020年11月16日 22:56
validate this page