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2015年10月26日 (月)
先週のことだけれど、渋谷の丸善ジュンク堂書店で、書店員さんがレジ前ではじめたフェアが中止になってしまったそうだ。選書内容が政治的に偏っている、んだってさ。(東京新聞の記事)
当該の書店員さんによるtwitterでのつぶやきがきっかけらしいんだけど、そのきっかけはどうでもいいとして... ああ、生きている間にこういう時代が来ちゃったなあ、という感慨がある。
ともあれ、せっかくの選書が闇に葬られちゃうなんて、悲しいことだ。幸い、棚の写真をみつけることができたので、しみじみと眺め、どんな本が並べられていたのか推測してみた。所要時間約一時間。ヒマな奴だといわれても反論できない。
【フェア情報】自由と民主主義のための必読書50
http://t.co/dRBqQeJ7Uv
MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店メインレジカウンター前フェアテーブルにて開催しております。 pic.twitter.com/hilDHcxoRf
— 丸善ジュンク堂書店 (@maruzeninfo) 2015, 10月 14
丸善ジュンク堂書店公式アカウントによる上のツイートの写真に準拠し、左上から順に、読み取れる書名をリストアップした。なお、このツイートが10月14日、撤去が21日。期間中に本の入れ替えがあっただろうから、あくまで一時点でのリストに過ぎない。
- 高橋源一郎, SEALDs「民主主義ってなんだ?」(河出書房新社)
- 小熊英二「社会を変えるには」 (講談社現代新書)
- TwitNoNukes(編)「デモいこ!--声をあげれば世界が変わる 街を歩けば社会が見える」(河出書房新社)
- 三一書房編集部「デモ! オキュパイ! 未来のための直接行動」(三一書房)
- 五野井郁夫「「デモ」とは何か―変貌する直接民主主義」(NHKブックス)
- 高橋源一郎「ぼくらの民主主義なんだぜ」(朝日新書)
- オキュパイ!ガゼット編集部(編)「私たちは“99%”だ -- ドキュメント ウォール街を占拠せよ」(岩波書店)
- ノーム・チョムスキー「アメリカを占拠せよ!」(ちくま新書)
- 神奈川新聞「時代の正体」取材班「時代の正体――権力はかくも暴走する」(現代思潮新社)
- 想田和弘「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」(岩波ブックレット)
- 砂原庸介「民主主義の条件」(東洋経済新報社)
- ロバート・A・ダール「デモクラシーとは何か」(岩波書店)
- ロバート・D. パットナム「哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造」(NTT出版)
- 延々悩んでついに発見。クリス・アボット「世界を動かした21の演説 -- あなたにとって「正しいこと」とは何か」(英治出版)だ!!
- 岩波ジュニア新書。題名は五文字くらい。
- F・A・ハイエク「ハイエク全集 I-別巻 隷属への道【新装版】」(春秋社)
- 佐藤卓己「輿論と世論―日本的民意の系譜学」(新潮選書)
- 文庫本が2冊。サイズは文庫にみえるけど、出版社の見当がつかない。
- カント「永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編」(光文社古典新訳文庫)
- 光文社古典新訳文庫が3冊。背中は緑と青。
- プラトン「国家 上」(岩波文庫)
- プラトン「国家 下」(岩波文庫)
- 岩波文庫が4冊。さすがにこれは読み取れない。文脈からいえばトクヴィルあたりが怪しいけど...
- 遠藤誉, 深尾葉子, 安冨歩「香港バリケード -- 若者はなぜ立ち上がったのか」(明石書店)
- 朝日新聞「カオスの深淵」取材班「民主主義って本当に最良のルールなのか、世界をまわって考えた」(東洋経済新報社)
- 國分功一郎「来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題」(幻冬舎新書)
- 新書。ちくまプリマー新書かな?
- 枝川公一「ぼくらの瀕死のデモクラシー」(芸術新聞社)
- 単行本。白地のカバーに赤の帯。「××の政治学」と読める。吉田徹「感情の政治学」(講談社選書メチエ)を連想したけど、講談社選書メチエにはみえない。布施哲「希望の政治学―テロルか偽善か」(角川叢書)か、文脈がちがうけど金原修「知識の政治学」(せりか書房)か...
- コリン・ヘイ「政治はなぜ嫌われるのか――民主主義の取り戻し方」(岩波書店)
- 単行本、たぶんソフトカバーで、青地のカバー。
- なぜか突然、ジョセフ・S・ナイ「ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力」(日本経済新聞社)。こういうところが、ひとの選んだ本を眺める醍醐味ですね。
- ハンナ・アーレント「イェルサレムのアイヒマン -- 悪の陳腐さについての報告」(みすず書房)
- 牧野雅彦「精読 アレント『全体主義の起源』」(講談社選書メチエ)
- ハンナ・アレント「人間の条件」(ちくま学芸文庫)
- 高田博行「ヒトラー演説 - 熱狂の真実」(中公新書)
- 港千尋「革命のつくり方」(インスクリプト)
- 学術文庫編集部(編)「日本国憲法 新装版」(講談社学術文庫)
- 文庫。なんとなく文春文庫のような雰囲気。東京新聞政治部(編)「読むための日本国憲法」(文春文庫) かな?
- 佐藤幸治「立憲主義について 成立過程と現代」(放送大学叢書)
- 長谷部恭男「憲法とは何か」(岩波新書)
- 長谷部恭男「法とは何か -- 法思想史入門」(河出ブックス)
- 小林節「タカ派改憲論者はなぜ自説を変えたのか 護憲的改憲論という立場」(皓星社)
- 平凡社ライブラリー。長めのタイトル。前後の文脈からすると、C.ダグラス・ラミス「増補 憲法は、政府に対する命令である。」(平凡社ライブラリー) あたりが怪しい。
- 中野晃一「右傾化する日本政治」 (岩波新書)
- 古賀茂明「国家の暴走 安倍政権の世論操作術」(角川oneテーマ21)
- 講談社現代新書。水色。山口二郎「若者のための政治マニュアル」(講談社現代新書)かな?
- 高橋亮平, 小林庸平, 菅源太郎「18歳が政治を変える! — ユース・デモクラシーとポリティカル・リテラシーの構築」(現代人文社)
- 辛淑玉「悪あがきのすすめ」(岩波新書)
- 吉田敏浩, 新原昭治, 末浪靖司「検証・法治国家崩壊」(創元社)
- 大竹 弘二, 國分 功一郎「統治新論 民主主義のマネジメント」(太田出版)
- ブルース・ブエノ・デ・メスキータ, アラスター・スミス「独裁者のためのハンドブック」(亜紀書房)
- ジョージ・オーウェル「一九八四年[新訳版]」(ハヤカワepi文庫)
- ちくま文庫。題名は4文字くらい。文脈からいえばオーウェル「動物農場」(ちくま文庫)かと思ったけど、著者名が漢字にみえる。
- 表紙の右端がちらっとみえるだけだけど、水木しげる「劇画ヒットラー」(ちくま文庫) だという気がする。(よく気が付いたな俺、と自画自賛)
なお、twitterでみかけた呟きによれば、このフェアでSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動) (編)「SEALDs 民主主義ってこれだ!」(大月書店)をお買い上げになった方がいる模様。この写真の時点では入荷してなかったのかな。
丸善ジュンク堂書店の公式発表によれば、「本来のフェアタイトルの趣旨にそぐわない選書内容であったため、現在その内容について精査し選書を見直して再開する予定」とのこと。よもやなかったことにはなさらないと思うので、いったいどう見直すのか、楽しみに待ちたいと思う。
どうせなら、アンダーソン「定本 想像の共同体」(書籍工房早山)とか、トクヴィル「アメリカのデモクラシー」のワイド版岩波文庫とか(文庫だと読み通せる気がしない)、坂井豊貴「多数決を疑う -- 社会的選択理論とは何か」(岩波新書)とか、どうでしょうか。福沢諭吉や吉野作造が並んでいるのも面白いと思う。フィクションに幅を広げて、井上ひさしの東京裁判三部作はどうかなあ? アーレント「人間の条件」の隣に立岩真也「人間の条件 そんなものない」を置くというのも、ちょっと可笑しいと思う。
2015/11/01追記: 東京新聞が書名リストつきの記事を載せてくれたので、答え合わせが可能となった。だいたい当たっておりました。そうか、キング牧師関連の本が入っていたのか。それは思いつかなかった。
ありがとう東京新聞さん。これは前々から思っているんだけど、「こちら特報部」だけのメール配信とかがあったら、有料でも加入します。
紙面【こちら特報部】民主主義ブックフェア中断。偏見?いや 王道です。ほか 詳しくは本日(10月31分日付)東京新聞朝刊にて。 pic.twitter.com/berWmrZYYF
— 東京新聞ほっとWeb オフィシャル (@tokyohotweb) 2015, 10月 30
雑記 - 2015年10月・丸善ジュンク堂渋谷店「自由と民主主義のための必読書50」フェア選書リスト