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2016年5月 7日 (土)

Bowling, N.A., Huang, J.L., Bragg, C.B., Khazon, S., Liu, M., & Blackmore, C.E. (2016) Who cares and who is careless? Insufficient Effort Respoinding as a reflection of respondent personality. Journal of Personality and Social Psychology.
 調査にいいかげんに回答する傾向(IER)とパーソナリティとの関係についての研究。
 すぐには役に立ちそうにない話だし(調査対象者をパーソナリティでスクリーニングするわけにもいかない)、ちょっとお気楽すぎるテーマだし(心理学専攻の卒論とかでいかにもありそう)、普段なら食指が動かないのだが、掲載誌がJPSPってところにひっかかった。ま、仕事に役立つかも知れない、ってことで...

 個々の調査参加者のIERの測り方については、この論文にはあまり説明がなくて、先行研究をみないといけない模様。項目間で回答の矛盾があるとか、「ありえねー」回答とか、そういうのを使っているみたいだ。
 以下、内容メモ:

 調査にいいかげんに回答する傾向(insufficient effort responding, IER)の先行研究:

本研究では、

実験は5つ。

研究1。IERとFFMの関連性、IERの時間的一貫性を調べる。
 大学の人事部門と組んで職員を調査。13ヶ月おいて2回実施(T1, T2)。T1とT2の調査項目は同一で、パーソナリティとかいろいろ訊いている。 ほぼ全員がオンラインで回答。匿名回答だが2回の回答をマッチングできる。両方回答してくれた166名(11%)について分析。
 IERの指標については、Curran (in press JESP), Desimone, Harms, & Desimone(2015 J.Org.Behav.), Huang et al. (2012) Maniaci & Rogge (2014), Meade & Craig (2012)をみよ。まあとにかく、Overall IER indexというのとその4つの下位指標を出したんだそうな。
 結果: 指標のT1の値とT2の値は高く相関。ただし同一調査での指標間相関も高い。

研究2。IERの状況間一貫性を調べる。
 被験者は学生。スクリーニング調査でデモグラなどを聴取。24日後、本調査でパーソナリティとか生活満足とかを聴取。調査者も違うしウェブサイトのURLもデザインも違うし報酬も違うから、つまり状況が異なりますよね[←く、苦しい理屈だ...]。両方答えた759名を分析。
 スクリーニング調査では5項目でIERを測った[よくわかんないけど項目間での回答の矛盾を調べているみたい。Huang et al. (2015)をみよとのこと]。
 本調査では... [めんどくさいので読み飛ばした。まあとにかく、調査回答やら反応時間やらをつかって、Overall IER indexとその下位指標を出したらしい]。
 結果:IER指標は調査間で相関。

研究3。別の目的でとったデータを使ってIERの状況間一貫性を調べる。初回調査ののち、6週にわたってオンラインで週次の記録を付けさせる実験であった。被験者は学生229人。
 初回調査にはinstructed-response項目が混ぜてあったので(「この項目ではstrongly agreeをチェックしてください」というような項目)、そういうのを使って、Overall IER indexとその下位指標を出した。週次記録は、提出有無と、別の評定者による「努力して回答しているか」評定をIERの指標とする。
 結果:IER指標は状況間で相関。

研究4。IERとパーソナリティ(ビッグ・ファイブ)の関連性を調べる。さすがにパーソナリティも同じ質問紙で測るってわけにはいかないので(そこでIERが起きるかもしれない)、知人の報告を使う。仮説は次の通り:

被験者は研究3と同じプールの学生。パーソナリティとかいろいろ訊いておいて、そこからOverall IER indexとその下位指標を出した。さらに、メールで知人をひとり紹介してもらい、その知人に質問紙を送って5因子を評定。International Personality Item Poolというサイトから拾った項目、因子あたり10問。データが揃った217人を分析。
 結果: 統制性と協調性はIERと負の相関を示したが、開放性は無相関。開放性の測定が難しいせいかもしれないし、他者評定だったからかも知れない[←往生際が悪い...]。なお、感情的安定性も外向性もIERと負の相関を示した。これは今後の課題。

研究5。IERとGPA・講義欠席率との関連性を調べる。これらはパーソナリティの外的基準として広く用いられているから[←いやいやいや... 学生のIERと講義欠席率の相関が高かったとして、その共通の原因がパーソナリティだっていう説明にはかなーり無理があるんじゃないですかね? 普通に考えれば、その2つの背後にあるのは学業への熱意なのではないかしらん]。GPAとは負の相関、講義欠席率とは正の相関が想定される。
 被験者は学生、349人を分析。パーソナリティとかいろいろ訊いて、そこからOverall IER indexとその下位指標を出す。GPAと講義欠席率は自己報告。
 結果: 仮説を支持。

 この研究の含意:

  1. IERは個人差の結果だよ。もちろん状況要因もあるでしょうけど。
  2. 自己報告質問紙を使う皆さん、IERに気をつけようね。IERを測って高い人のデータを捨てるとか、どうにかしてIERを予防するといった方法が提案されているけど、前者はパーソナリティの分布を歪めることになるかも。

 今後の課題:

 本分析の限界: [略]

 。。。要するに絵に描いたような相関研究である。当然ながら、考察もあんまし突っ込んだ話にはならない。こういうのでもJPSPに載るのか。

 結局のところ、多様な状況を通じて観察される行動傾向の背後にあるもののことをパーソナリティと呼ぶんだから、どんな行動領域であれ、個人差とパーソナリティとの相関を調べれば、そりゃあなにかは見つかるでしょう?と思う次第である。その相関が、当該の行動を生起させるメカニズムに新しい光を投げかけてくれるんだとか、あるいはパーソナリティそのものに新しい光を投げかけてくれるんだってんなら、それは素晴らしいですけど、ただ単に、やった!相関がありました!っていわれてもなあ...
 個人的には、こういう話にはあんまし関心無くて、むしろIERが起きるメカニズムの一端でもわかるとありがたいんですけどね。それを手がかりに調査手法を改善できるかもしれないから。

 あれじゃないかしらん。こうやってビッグファイブとの関連なんか調べてないで(ごめんなさい)、なんかプライミング手続きで認知を方向づけて、その結果IERが変わることを示したほうが、全然面白いんじゃないかしらん。たとえば、恐怖管理理論に基づき予測した通り、死のイメージを想起させると誠実さという伝統的価値観が顕在化し、社会調査に対するいいかげんな回答は減りましたとか。しかしそれはマジメそうな社会調査の場合であって、マーケティング・リサーチとかなんのためにやってんだかわかんない心理学の調査とかに対しては、逆にいいかげんな回答が増えちゃいましたとか。はっはっは。

論文:調査方法論 - 読了:Bowling et al. (2016) 調査にいいかげんに回答する人のパーソナリティ

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