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2016年5月15日 (日)
グローバル・マーケティング時代のマーケティング・リサーチにおいて(←かっこいい書き出し)、リサーチャーを苦しめる新たな難題リストのトップに躍り出たトピックがあると思う。AskingからListeningへとか?ビッグデータ活用とか?まさか。どなたも言わないのでひとりで勝手に呟くけど、 測定不変性(MI)の問題こそがそれだ。巷に溢れる実務家向け参考書のどこにも書いてないのが不思議なくらいだ。そういう本当に深刻な問題には、きっとみなさんご関心がないのであろう。面倒くさいもんね。
このたびもMIの問題で延々悩む事態が生じ、とりあえず知識のアップデートのためにと思って昼飯のついでに手に取ったのだが、いかん、油断していたら、聞いたこともないようなアプローチが出てきている...
van de Schoot, R., Schmidt, P., Beuckelaer, A.D., Lek, K., & Zondervan-Zwijnenburg, M. (2015) Measurement Invariance. Frontiers in Psychology, 6, 1064.
この雑誌のMI特集号のEditorial。まずMIという問題についてごく簡単に触れたのち、MIへのアプローチを4つに整理し、先行研究と掲載論文を紹介。
MGCFA。70年代のJoreskog, Sorbom に始まる伝統的アプローチである。
- Byrne et al. (1989 Psych.Bull.), Meredith(1993 Psychometrika) により、full MIとpartial MIの区別が導入された。
- レビュー: Vandenberg & Lance (2000 ORM), Davidov et al.(2014 Ann.Rev.Sociol.), Millsap(2011 書籍)
- 入門者むけおすすめ: Meredith(1993), Millsap(2011 書籍) [←故Millsap先生のこのご著書、初心者向けとはいいがたいと思うけど...?]
MIの欠如への対処。
- Lommen et al. (2014 Front.Psych.): PTSDについての事例。
- Hox et al. (2015 Front.Psych.): mixed mode調査で弱いMIさえ成立しなかったという事例。
- de Roover et al.(2014 Front.Psych.): cluster-wise ssimultaneous component analysis (SCA)による 不等項目検出。[←読まなきゃ!!]
- Barendse et al.(2014 Front.Psych.): Bayeian restricted latent factor analysis (RFA) による不等項目検出。[←BSEMとはちがうのだろうか?]
- Guenole & Brown (2014 Front.Psych.): categorical item factor analysisで、潜在変数の構造に不等性があるのを無視すると回帰パラメータにどんなバイアスがかかるかをシミュレーション。
近似的MI。
- Muthen & Asparouhov (2012 Psych.Method): BSEMアプローチ。[説明が書いてあるけど略]
- van de Schoot et al.(2014 Front.Psych.): 近似的MIに到達する方法のチュートリアル。
- Cieciuch et al. (2014 Front.Psych.), Zercher at al.(2015 Front.Psych.), Bujacz et al.(2014 Front.Psych.), Chiorri et al.(2014 Front.Psych.): BSEMと伝統的手法の比較。
- Fox & Verhagen (2010 in "Cross-cultural Analysis"): 近似的MIをIRTに拡張。事前分布を使わない。[←面白そう!!]
- Kelcey et al. (2014 Front.Psych.): Fox & Verhagenの拡張。
- Muthen & Asparouhov (2014 Front.Psych.), Asparouhov & Muthen (2014 SEM): alignment法。[SEM誌の論文とはたぶんMplus Web Notes 18のことであろう]
MGCFAよりもっと複雑なモデルにおけるMIのテスト。
- Wang et al.(2014 Front.Psych.): 補助変数が名義変数じゃなくて順序変数・連続変数だったときのMIのテスト。[←順序変数ってのはわかるけど... 連続変数ってどういうことよ。動的回帰みたいな話になるの?!]
- Verdam & Oort (2014 Front.Psych.): クロネッカー制約付きのSEMモデルにおけるMIのテスト。時系列潜在変数モデルの代替案となる。[←全然わからん... 読んでみなければ]
- Adolf et al.(2014 Front.Psych.): miltiple-occasion and multiple-subject time series において、時点間MI, 個人間MI, 時点x個人間MIをテストする。[←やばい... これ滅茶苦茶面白そう...]
- Boom (2014 Front.Psych.): 認知発達の分析にMIが重要な役割亜を果たすという事例。
- Jak (2014 Front.Psych.): 3レベル階層モデルでMIをテストする。
- Geiser et al.(2014 Front.Psych.): MMTMモデルの拡張。
- Kroonenberg (2014 Front.Psych.): two-way rating デザインにおけるMIのテスト。
。。。特に国際調査の場合がそうなんだけど、MIが失われる主要な原因のひとつはresponse styleのちがいなので、そっちに言及がないのがちょっと残念。まあ考えてみると、MIの文脈では、DIFとかがある特定の項目を削ったりなんだりしてMIに到達するのが目的になるのに対して、response styleの文脈では項目共通のscale usage heterogeneityを仮定してそれを修正するのが目的になるので、研究が重ならない、というのはわかる。実務場面では、項目セットにおけるDIFとresponse styleはたいてい手を取り合って襲いかかってくるんだけど。
論文:データ解析(2015-) - 読了: van de Schoot, et al. (2015) 測定不変性の最前線