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2016年5月30日 (月)

原稿準備のためにとったメモ:

Houtokoop-Steenstra, H. (2000) Interaction and the Standardized Survey Interview: The Living Questionnaire. Cambridge University Press. Chapter 9. Implications for survey methodology.

1. イントロダクション[略]

2. 診断の道具としての会話分析
 調査回答場面の録音をつかった行動コーディング研究は、たくさんのインタビューを分析できる反面、現象の原因についてはわからない。いっぽうCA(会話分析)は少数事例の分析であっても、気づかれていない問題を明らかにする。
 たとえば質問の曖昧性。先行研究を参照するのも大事だが[Belsonという人の本が挙げられている]、対象者のclarification requestが曖昧性を教えてくれる。Schober & Conrad (1997 POQ)をみよ。
 また質問直後の沈黙時間とか、インタビュアーのclarification待ち行動とか、語尾を上げた聞き返しとか、インタビュアーの質問反復とかも役に立つ。選択肢にない反応とかも。インタビュアーの逸脱や回答候補呈示とかも。集計表ばっかりみてないで、逸脱事例に注目しましょう。

3. 構造的問題の検出
 closed questionで、インタビュアーが選択肢を全部読み上げる前に対象者が回答しちゃう事例は危険のサインである。ターンテイキングの構造を変えないといけない。

4. 質問定式化についての新しい問いの生成
 CAで問題をみつけ、実験や認知インタビューで詳しく調べる、ということもできる。
 
5. 柔軟な標準化インタビューの探求
 標準化の探求は、すくなくともその目的が調査データの信頼性だけでなく妥当性にもあるとするならば、もはや維持できない。

5.1 調査方法論と導管メタファ
 伝統的な刺激-反応モデルは、(1)意図された意味と質問の目的が言語的意味とcoincideすると想定し、(2)対象者が調査者の意味したとおりに設問を解釈すると想定する。これらの想定はM. Reddyいうところの導管メタファに由来している[この本のなかでReddyはここが初出。conduit metaphorってそんなに有名なの?] 導管メタファの最大の問題点は、意図された意味と解釈との関係である。対象者は調査者の意図とは異なるやりかたで質問の意味や目的を解釈する。
 対象者に同じ質問文を提示することではなく、同じ「意図された意味」を提示することを目指すべきだ。それが抽出できない対象者に対しては、インタビュアーは調査者のスポークスマンとしてふるまうようにトレーニングすべきだ。

5.2 インタビュアーが質問と回答について議論するのを許容せよ
 インタビュアーはスポークスマンなんだから、質問の意味と対象者の回答について議論してもよいことにしよう。[ここでSchober & Conrad の実験の紹介]

5.3 インタビュアーにフォーマット化されていない回答を受容させよ
 [節タイトルのとおりの内容]

5.4 インタビュアーが推論を引きだし検証するのを許容せよ
 インタビュアーが推論を許されていないということが対象者にはなかなかわからない。推論を許し、検証させよう。たとえば「私の夫が...」というセリフが出てきた後では、対象者は既婚だと推測してよいことにし、未既婚の質問では既婚であることを確認することにしよう。

5.5 対象者にルールを説明せよ
 最初にインタビュー特有のルールを対象者に教示するという手もある。ただし、(1)いやになっちゃって回収率が落ちるかも。(2)従ってくれないかも。

5.6 標準化されたインタビュー・ルールはインタビュアーに問題を突きつける
 インタビューの標準化されたルールに本当に従っていると、インタビュアーは無礼なアホにならざるを得ない。インタビュアーがルールを守らないのはもっともだ。

6. 柔軟なインタビューのコスト
 柔軟なインタビューの欠点: (1)インタビュアーの行動の評価が困難になる。データの妥当性向上がそれに見合うのならばそれで良し。見合わない場合は、インタビュアーの評価なんてどうでもいいんじゃないかということになるかもしれない。(2)インタビュアーのトレーニングが大変になる。(3)柔軟なインタビューには時間がかかる。これらも、データの妥当性向上がそれに見合うかどうか次第である。

論文:調査方法論 - 読了:Houtkoop-Steenstra(2000) 生きている調査票 9章 調査方法論に対する含意

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