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2016年5月30日 (月)
原稿の都合で読んだ論文を記録しておく。
Kiousis, S. (2002) Interactivity: a concept explication. New Media and Society, 4(3), 355-383.
相互作用性という概念についてのレビュー論文。掲載誌についてはよくわからないが(Webcatでは所蔵館数5)、google様的には引用元537件、この分野にしちゃ多いと思う。
長い論文で、特に後半はちゃんと読めてないけど、時間が無い。コミュニケーション研究における相互作用概念の先行研究レビューのみメモ。相互作用性についての定義を片っ端から集め、強調するのは(1)技術か、(2)コミュニケーションセッティングか、(3).知覚者か、に注目する。
- サイバネティクス。相互作用性とはチャネルの属性であった。(2)ですね。
- 80年代、PCなどニューメディアの登場とともに出てきた、三次依存性という議論。たとえば「5分前に今夜映画に行きたいって言ってたのに、なんで気が変わったの?」「変わってないよ、2分前にあなた明日映画に行きたいって言ったじゃない」というような会話では三次依存性が生じている。相互作用性とはこういう風に互いの談話を制御し役割を交換する程度のことだ、という主張。これも(2)だけど、チャネルじゃなくて関係性に寄っている。この系統の研究者たちは、メディアの内容と心理・行動変数との関係を検討した。技術や個人属性はあんまり重視しない。Rafaeliという人が有名。
- その後コンピュータ科学との関連で、相互作用性を技術の構造とユーザの特性との関係のなかで捉える立場が出てきた。相互作用性とはメディア環境の形式や内容をユーザがリアルタイムに変えられる程度を表す。そのスピードやレンジやらが増えるとより相互作用的になるって考えるわけだ(とはいえ、たとえばIDEOによれば最新鋭のテレビでもユーザは少数の機能しかつかっていないのだそうで、過ぎたるは及ばざるがごとし、というような面も考慮する必要がある)。こういう立場の人は、相互作用性をさらに細かく操作的に定義したりしているのだが、三次依存性といった系統の相互作用性概念には目もくれない。Steuer, Jensenなど。(1)。
- Durlakという人は技術的観点ではあるがちょっと違った観点からインタラクティブ・メディアを分類している。相互作用性と関連する変数を、相互作用システムの物理的な構成要素として捉える。[←よくわからん] これも(1)。
- 視点かわって、知覚に注目する系統。NewhagenらはNBCニュース視聴者のメールの内容分析の中で、相互作用の知覚という心理学的変数を考えている。この知覚がwebサイトへの態度に影響するという研究もある[←腐るほどありそう...]。(3)。
- ここからは(1)(2)(3)のうち複数を視野にいれている研究。Heeterという人は相互作用性を6次元で定義している: (a)利用可能な選択の複雑さ、(b)ユーザに求められる努力、(c)ユーザに帰せられる責任、(d)情報利用のモニタリング、(e)情報追加の容易性、(f)対人コミュニケーションの促進。(a)(d)(e)(f)が技術、(c)がセッティング、(b)が知覚に近いですね。こういう枠組みはほかにも提案されている[略]。コンピュータに媒介されたコミュニケーションに主な関心を向けている場合が多い。
- 情報が流れるスピードじゃなくて、ユーザから見たタイミングの柔軟性が相互作用性のカギだ、という主張もある由。Downes & MacMillan (2000, New Media & Soc.)。
論文:調査方法論 - 読了:Kiousis (2002) 相互作用性とは何か